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駅から目的地の公園まではそう遠くなく、早速入り口が見えてきた。
「ここ来たことある?」
冬音は目を輝かせながらこちらを見る。
「ううん、初めて来たよ。大きい公園だね!」
「僕も今日初めてなんだけど、全部回るのに1日かかるんだって」
「そんなに広いの!?」
冬音のワクワクがこっちまで伝わってくる。
こんなに楽しそうにしてくれるなんて思っても見なかったな。
夏季講習の休み時間。
前の席に座る親友の結城 レン(ゆうき れん)がこちらを向き椅子を傾けて座る。
『映画とか買い物もいいけど、まずは自然だ。
普段見ないところをよく見てみるといろんな発見があるだろ?
発見したことを話せば話題は尽きねえし、
七葉の意外な一面もみれるかもなぁ。
あ!
大事なのはリードだぞ!
そう言うのに女子は惚れるからな!!
にしてもよーお前、ミステリアス美女とデートなんて
いいなぁうらやましいなぁ!!』
ふとあの時の情景が浮かぶ。
レンの作戦が上手くいったよ。
心の中で感謝の言葉を呟こうとした時、レンの得意げな表情が浮かぶ。
あはは、次の夏季講習でジュースでも奢ってあげよ。
入場券を購入するための受け付けには数人の列ができていた。
列に並び順番を待つ。
「楽しみだね、璃音」
突然の呼び捨てに思わず彼女をみる。
「え?」
長い睫毛に黒い瞳。
木漏れ日に照らされ、眩そうに目を細める彼女に思わず見惚れてしまう。
冬音は時間が止まったような僕を不思議そうに見てから受付の人にいつもの笑顔を見せる。
「大人二人ください」
「200円です、今日は涼しくて良かったねぇ」
受付の優しそうなおばさんはチケットを冬音に渡しニッコリとして見せる。
「楽しんでね」
冬音がお礼を言ってゲートの方を向いた後、固まる僕に受付のおばさんが『頑張れ』とジェスチャーをしてくれる。
僕は『ありがとうございます』と心で言い、お辞儀をしてから冬音とゲートに向かった。
ゲートの前で二枚あるチケットを一枚もらう。
「はい 璃音くんの」
「ありがと」
「あのさ、ここ通るのワクワクしない?」
「うん、すごく」
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