14人が本棚に入れています
本棚に追加
中に入るとすぐに景色が変わる。
さっきまで都会らしくビルに囲まれていたのに、ここはもう大自然の中だ。
遠くの方まで見える緑の丘と大きな木々は公園の広大さを理解するのに充分だった。
冬音は遠くの方を覗くように見て、
「すごい広いんだね!」
「僕もびっくりしたよ」
「あ!ほら、地図があるよ」
「ほんとだ、見てみようか」
僕たちは大きな地図の前に立ち現在地を探す。
ん?
今が、ここだから…
「僕たち、今ここにいるね」
「うんうん」
「どこから行く?」
「うーん、じゃあミソハギがいい」
「え、ミソハギ?」
「ほら、見頃だって書いてあるからさ」
笑顔で地図に書いてある見頃の花を指さす。
ミソハギ、聞いたことない花だ。
どんな花なんだろうか。
味噌だから茶色い花かな?
なんだか興味が湧いてきた。
『見頃の花 一覧と大温室の見どころ!』と書かれた張り紙を見る冬音は嬉しそうな表情を浮かべている。
もしかして、植物好きなのかな?
レンの言う通りいい発見ができそうな予感だ。
冬音は地図を見て何やら考え始める。
「うーん、こう見るとここに居るから
ここがミソハギで…
こういって、ここから…
んー
……
きまった!」
「え?」
冬音はに人差し指を地図につけ説明しながら道をなぞる。
「ほら!ここにミソハギ、こう行って真ん中の池を渡って大温室。
したら、こっちから回ってくる!」
「うん、いいね!」
冬音の幸せそうな表情を見ていると、いつの間にか緊張が消え自然と笑顔になっていた。
幸せだ、僕はそんなことを感じながら地図が載ったパンフレットを取る。
「じゃ、璃音くん いこっか!」
その声に振り返ると同時に手を優しく引っ張られる。
驚いた僕は恥ずかしくて一度も読んだことがなかった名前を思わず呼んでしまった。
「ふ、冬音、ちゃん!?」
それも噛み噛みで謎の間からのちゃん付け。
顔が赤くなるのが自分でもわかる。
冬音はそんな僕を見て笑った。
「あはは、璃音くんもそんな顔するんだね」
「もー!やめてって!」
二人で笑い合いながら、僕達の公園の旅が始まった。
最初のコメントを投稿しよう!