ハウスキーピング8

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「あ、あの…今の聞かなかったことに……」 「なりません。なれません」 「ですよね……」  美弥さんは眼の前のジュースを思い切り飲み干し、ダンッと音がするほど力強くテーブルに置いた。 「キス、されたの?」 「……されました」 「嫌じゃなかった?」 「嫌、ではなかったです」 「むしろ、良かった?」  うぐっ……それは答えなきゃいけないんだろうか。どう答えようか返答に困り、ちらっと美弥さんを見てみると、その瞳はキラキラと輝いている。この顔はあれだ。女子が恋バナしてる時のあの顔だ。 「美弥さん、面白がってません?」 「え!?そ、そんなことないけどっ!?」 「絶対面白がってますよね!俺、結構真剣に悩んでるんですけどっ」 「ご、ごめん!つい……ね」  美弥さんは誤魔化すように笑ってから、コホンッと咳をして、また真面目な顔に戻った。 「でもさ、棚橋くん。キスされても嫌じゃないなら、何に困っているの?」 「それは……」  と言いかけて、口をつぐむ。具体的にどう困っているのかと聞かれると、はっきり口にできない。俺は同性愛者ではないから気持ちに応えられないから、とか?
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