《こ ・ こ》

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 今日の昼出シフトを定時であがり、遅めの夕食をコンビニで調達したわたしがアパートの外階段を最上段にさしかかった時だった。時刻は22時を少し回る頃。ちょうど、これから出かけようとする右角部屋の住人が玄関の鍵をガチャリと閉め終えたところの横顔に出くわした。この右角部屋の住人とは面と向かって話をしたこともおそらく片手にあまるくらいで、会話らしい会話なんて引っ越しの挨拶をした時以来になる。  ただこのタイミングを逃してはいけないような気がした。 「こんばんは」  刹那、時間が時間だけに音量を抑えながらも、わたしはすかさず会釈をしつつ挨拶をしていた。向こうもこちらに気付くと、こんばんは、と返してくれた。こんな夜更けに持ちかける相談内容ではないのだが、気を揉もんでまごついてばかりはいられない。意を決して迷いを振り払うと、わたしは次第を切り出した。 「すみません、お隣に越してきた方のことなんですが……」
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