スタート

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 みんながそれぞれの話題で盛り上がっている横で、1人の女の子が声を掛けてきた。 「鈴木さん…でしたっけ?山に登るんですか?」  矢田保奈美と名乗ったその女性は、山登りの話を聞きたがった。どうやらアウトドアが好きらしい。  聡史は半信半疑ながらも、今まで自分が登った山のことや遭難しそうになったこと、山で出会った動物たちの話をした。保奈美は真剣に聞いてくれた。  話を聞くたびに大きく頷いては、笑ったり驚いたり、目を輝かせていた。聡史は次第に機嫌を取り戻し、いつかは日本アルプスや外国の山に登りたいという、今まで誰にも言っていなかった夢まで語っていた。  保奈美の興味は尽きることなく、山登りにはどんな道具がいるのか、まず準備した方が良いものな何かなどを質問してきた。その都度、聡史は自分の拙い経験や雑誌から知り得た知識を保奈美に伝えた。 「鈴木さん、今度一緒に連れてってくれませんか?山登り」  最後には保奈美の方からそう言って、連絡先を教えてくれた。 「うん。ぜひ、ご一緒しましょう」  聡史は笑顔でそう答えた。
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