プロローグ

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 大人になるに従って他にやるべきことが増えたのもあるが、山登りよりももっと楽しいことが見つかり、山登りのことは頭によぎらなくなった。  はっきりいって、山登りに対する興味や関心は、これっぽっちもなくなっていた。  聡史は中・高時代、陸上部に所属していた。主に中距離の選手で、県大会ではそこそこの成績を残していたが、トラックを走り続けることに、正直飽きを感じていた。  ほとんど変わらない景色。周りの選手、そしてタイムとの戦い。ぐんぐんタイムが縮まる時期には面白さを感じていたが、伸び悩むに従ってその感情は強くなった。  陸上を離れてから、聡史は全く運動をしなくなった。しなやかさを失っていく身体、徐々にメタボ体型に変わりゆく自分の腹を目の前にしても、運動への情熱は湧かなかった。
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