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そこから10分ほど歩くと視界が開けた。眼下には草原が一面に広がっている。
「うわー!きれい」
保奈美は目を輝かせながら言った。
この辺りは2月下旬から3月上旬頃に野焼きがあり、一旦は一面真っ黒の煤で覆われるが、4月になるとその面影は消え、美しい新芽で彩られる。
今はちょうど一面緑で、時折吹く風が新たに芽生えた草を撫でていくのが分かる。
その景色を見ながら2人は小休憩を取った。道を避けて座れるところを探し、ザックを下ろした。
持参したドリンクを飲み、一息入れる。聡史はザックから小分けにした行動食を取り出し、1つを保奈美に差し出した。
「ありがとう」
保奈美はそれを受け取ると、自分もザックからキャラメルを取り出して、聡史に渡した。
「キャラメルはすぐにエネルギーに変わるからいいんだよね?」
保奈美は笑いながら、以前聡史から教えてもらった豆知識を言った。
聡史も笑いながら頷いて、そのキャラメルを受け取り口へと放り込んだ。
甘い塩味がした。
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