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それぞれにおにぎりを食べながら、2人で保奈美が作ってきたお弁当を食べた。
そうしている間にお湯が沸き、クリームシチューとコーンスープを啜った。
普段は特別おいしいとは思わない物でも、こうやって身体を動かし、雄大な景色の元で食べる食事は、この上なくおいしかった。
スープが身体中に沁み込んでいくのが分かった。
「はぁ~幸せだ~」
保奈美はうっとりとした表情で呟いた。その何とも言えない表情がおかしくて、聡史は笑った。つられて保奈美も笑った。
昼食が終わると、保奈美のザックから様々なお菓子が出てきた。
チョコレートやチップス、大福まである。さすがは女子だ。甘い物、しょっぱい物がバランスよく目の前に並べられている。
2人はそれを分け合って、この優雅なひと時を過ごした。
「ふーっ、おなかいっぱい」
保奈美はそういうとレジャーシートに寝転がった。空はどこまでも澄んでおり、時折、鳥が視界を通っていった。
「山登りっていいですねー。何か、日常のもろもろを忘れちゃうな」
保奈美が眠くなった目をこすりながら言った。
「そうだね。だから俺も登るのかもしれないな」
聡史は保奈美の横に座ったまま、遠くの山を見ながら呟いた。
2人は多くを語ることなく、ただただゆっくりと過ぎていく時間を過ごした。
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