プロローグ

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 大学を卒業し就職して数年たったある日、実家に帰った聡史はクローゼットの奥にしまわれた小学校時代の日記帳を見つけた。  何気に広げてみると、少年時代に走り回っていたこと、そして友人たちとやみくもに山を駆け回っていたことをふつふつと思い出した。そして身体の奥からうずうずとした何かが溢れてくるのを感じた。そして思い立った。 「山へ行こう」  久しぶりの山は怖かったため、初めは職場の経験者に連れて行ってもらい、やり方や計画の立て方を教えてもらった。そんなことを数回繰り返し山登りのいろはを習得すると、それからは一人で登るようになっていた。  山岳部に属した経験はなく、登山に関してははっきりいってど素人だ。自分の体力や実力をわきまえ、けっして危険な山には行かなかった。初めて挑戦する山には、職場の先輩に相談して、できれば一緒に行ってもらうようにした。
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