プロローグ

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 数年の経験と登山雑誌からの知識を得て、聡史は少々困難な山に一人で出かけるようになった。  登山道を独り進み、誰もいない道の脇に立ち止まってスポーツドリンクで喉を潤す。俗世間から聞こえる音は全て遮断され、自然の静寂が訪れる。周りには誰もおらず、聞こえるのは自分の呼吸する音と微かになびく風の音、時折聞こえる鳥のさえずり。    陸上競技場をぐるぐる走る続けるのではなく、変化する景色や道の中に、かつて感じたことなかった自由と爽快感を感じた。今まで気づかなかった世界に触れ、自然と心が躍動した。  時間は仕事の時とは打って変わり、ゆっくりと過ぎていく。時間は追われるものではなくて、追うべきものなんだな。聡史は自分の生活を振り返りそう感じた。
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