プロローグ

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 その爽快感にやみつきになった聡史はますます単独登山にのめり込んでいく。  仕事上、たくさんは行けないが、月に1回ペースで自家用車で行ける山を次々と登った。時々、霧のため経路を見失い、危うく遭難しかけたり、猪とばったり出会ったりで、山の恐ろしさも体験した。霧の中ではたまたま経路に戻ることができ、猪との遭遇では向こうが威嚇してきたものの、もの凄い音をたてながら逃げてくれたので、今も生きて山に登ることができている。  それからというもの、きちんとコンパスを持ち、携帯には登山用のアプリも入れた。猪に効くかは分からないが、熊除けのベルも買った。ひとつひとつの経験から着々と装備を充実させていった。  山登りは聡史にとって、すでに大切な生活の一部と化していた。
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