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第1章 世紀の判決 第1節 村上 正人
20×8年10月15日
ー 村上宅 ー
村上正人(むらかみまさと)は、昼食のオムライスを食べ終えて、食後のコーヒーを啜りながら、ソファに腰を下ろした。
ソファの横のサイドテーブルに手を伸ばし、テレビのリモコンを手に取ると、電源ボタンを押した。
いつもこの時間に家に居る時に見ている情報番組が映り出した。正人は、リモコンをサイドテーブルに戻すと、前傾姿勢でテレビ画面に集中した。
“「いやぁ、大変な判決がでました。朝倉さん、いかがですか。」”
MCを務める芸人が、専門家に意見を伺った。
“「いやぁ前代未聞というか、裁判官も相当勇気がいったと思いますよ。」
「その由比裁判長なんですが、来月に退職を迎えるようですね。色々と憶測を呼びそうです。ではここで裁判所前から中継です。橋本さん。」”
MCがスタジオの外にいるリポーターに呼び掛けて、画面が切り替わった。
“「はい、こちら最高裁判所前の橋本です。裁判所前には、私はかつて見たことない数の報道陣が詰め寄せています。今回の判決が公になった瞬間、私も含めて響動めきが起こりました。」”
画面の右下にスタジオのワイプ画面が出て、MCが質問を出した。
“「橋本さん。傍聴希望者も相当な数だったと聞いていますが。」
「そうですね。百六十六席に対して約五千人の列が出来たとのことです。」
「ではもう一度今回の事件を振り返ってみ…」”
ープツンッー。
正人はテレビの電源を切るとリモコンをソファに投げ捨て、ゆっくり立ち上がった。
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