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それから十数分後、シャワーを浴びて濡れた髪を拭きながら凰花はリビングに現れた。
上半身は何も纏わず、首にかけたタオルで濡れた髪の毛を拭きながらソファの端にちょこんと腰掛ける咲久良の隣に座った。
「ふ、服着ないと風邪ひくよ……!」
直視できずに前を向いたままそう声をかけるが、凰花からは予想もしなかった返事が飛んでくる。
「どうせすぐ暑くなるから大丈夫。
……咲久良さん、」
突然低い声で名前を呼ばれ、何事かと思って顔を右隣に向けた瞬間手が伸びてきて顔をホールドされる。そして驚く声をあげる暇もなく、すぐに唇が重ねられた。
「ん……ーっ、」
一生懸命に凰花の身体を押し返そうとするが全く敵わず、そのまま後ろに押し倒された。
突然どうしてしまったのだろう。
訳の分からないまま、気持ちの良いキスを受けているうちに対抗する気力は奪われ、そのうちキスの気持ちよさと酸欠で頭がぼーっとしてくる。
そしてやっと離れた凰花の唇はてらてらと唾液で光り、咲久良と細い糸で繋がって、いずれ切れた。
「っ、はぁ、はぁ、とつぜん、どうしてっ、」
「……今日迷惑かけたから、俺にできるお礼、しようと思って」
その言葉で、凰花の頭の中がなんとなく読み取れてきた。
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