5

17/17
前へ
/205ページ
次へ
 咲久良に迷惑をかけたお詫びとお礼を兼ねて、咲久良を抱くと言っているのだろう。  しかし、そういう展開のために準備したわけじゃない。想像していたものと大きく異なったため、咲久良は戸惑っていた。  ……お詫びとか、お礼とかそういう理由で抱かれたくない。  そう思うと、咲久良は一生懸命抵抗した。  身体を捩り、凰花の身体を押し返していると、普段のように従順でない咲久良に疑問を抱きながら、嫌がられることに凰花は少し苛立った。 「……なんで嫌がんの?お礼なのに」 「……そんなの……いらないよ。上から退いてほしい……」  咲久良の台詞に凰花はやっと我に返り、すぐに上から退いた。  距離を取ってから、咲久良に向かって頭を上げた。 「ごめん、咲久良さん。俺、めちゃくちゃ嫌な感じだった。ほんとごめん」 「大丈夫だよ、酔ってるんだろうし……。  帰ってゆっくり休んだ方がいいんじゃないかな……」  これ以上今は一緒に居たくない、という意味を込めて遠回しに帰ることを勧めた。 「……ほんと、ごめん。すぐ帰る」  そういうと、凰花は服をすぐに纏い荷物を持って出て行こうとする。咲久良はそれを無視してじっと彼が帰るのを待つ。  リビングを出る前、「今日はほんとごめん。でも、楽しかったし、許してくれるならまた……」その先は言うのをやめたのか、静かに出て行った。
/205ページ

最初のコメントを投稿しよう!

417人が本棚に入れています
本棚に追加