白い雪

2/9
前へ
/11ページ
次へ
白い雪。 空からふわりふわりと綿のような雪が舞い、街の明かりが滲んで見えた。 「毅、どうした?」 「若、」 足を止め宙を見上げた毅の表情が、舞い散る雪でよく見えない。 「……雪ですね」 「ああ、なごり雪だな」 今宵舞う雪が最後になるだろう。 降っては積もり、積もっては溶けてを繰り返し、数日前に静かに消えた。 日増しに暖かくなる。 「なごり雪ですか―――」 毅が呟くのを、 「行くぞ」と声を掛け、待たせている車の中に促し乗り込んだ。 「どうした毅、そんな表情をして」 「いえ、なんでもありません」 運転席に座った仁が、ルームミラーから毅の顔を覗き込んだ。 特に変わったことはなかったが、さすが仁だ。 車に乗り込んだ仕草と表情だけで異変を感じ取った。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

160人が本棚に入れています
本棚に追加