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「雪と言えば、思い出すな。なあ、毅。あの子、今頃どうしてるんだろうな?」
毅は答えなかった。
知っていても答えたくなかったのかもしれない。
―――あの子
その言葉で思い出すのは、毅の家の隣に住んでいたという年の離れた幼なじみ。
毅が18歳でここにきてから、その数年後、毅に会いに来た少女。
名前は、しらゆきと言ったか?
田舎へ帰る別れの夜には涙をためて……そう、あの夜もこんな雪が舞っていた。
あの時15歳だった少女は今は18歳になっているはずだ。
幼い恋を抱えて、家出をしてきた少女は今はどうしているだろう?
毅の横顔を盗み見ると窓の方を向いたままだった。
毅は幼い恋をしている少女に、三年後に気持ちが変わらなかったらまた来いと頭を撫でて家に帰した。
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