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ケース7 狙われたサバンナのギャング
研究室で暇つぶしにテレビを見ていた時だった。
『続いてのニュースです。昨日未明、都内に住む派遣社員の女性(三十二歳)が職場から帰宅途中に何者かに刃物で刺されて死亡するという事件が発生しました。犯人はまだ捕まっておらず、警察によりますと付近にある防犯カメラの映像から男が映っており、事件の関連性があるとみて男を追っています。男は黒い帽子にマスクで顔を隠しており、体型は細身で身長は百六十五センチから百七十センチくらいで黒いジャンバーを着ていたとのことです』
「怖いですね。通り魔ですよ」
「そうね」と神楽坂さんは本を読んでおり、関心がなさそうに受け流した。
「最近、多いですよね。人が殺される事件。この間も犯人がビルの建物に火を起こして何十人と犠牲になった事件もあったばかりですし、物騒ですよね」
「何もおかしくないわよ。人間が人間を殺すことなんて大昔から起こっていることじゃない」
「それはそうですけど、今の時代でもこんな事件ばかりで嫌になりますよ」
「そうかしら。人間が人間である以上、同種族を殺すことは当たり前のこと。昔も今も関係ない。これからも人間がいる限りどこかで人間を殺していく運命じゃないかしら」
神楽坂さんは本に視線を向けたまま不謹慎な発言を落ち着いた口調で言う。
「さっきから何を読んでいるんですか?」
「動物の力学の本よ。これがまた面白くて」
神楽坂さんはあくまで動物にしか興味がない。人間がどうなろうと興味はなさそうだ。呑気で良さそうだと羨ましくなる。
「大体、同種族で殺し合うのは人間だけじゃないのよ? 動物にもそういうのはあるんだから」
「え? そうなんですか? そう言えば、そんな話をしていましたね」
「共食いをする為の殺し合いはどの生物も該当するけど、それ以外の目的で殺し合いも起こっているのよ。多くの場合はメスを争うオス同士の争い。例えばライオンなんかそうね。ライオンって言うのは一匹のリーダーを中心に群れを作っている。リーダーをかけて争って勝ったオスは群れのメスを総取り。負けたオスは死ぬか群れを去るかってところ。そして負けたオスの子供がいたら殺すのよ。残されたメスは勝ったオスに発情し、新しいオスの子を身籠もるのが主な流れね」
「人間だったらとんでもない話ですね」
「そこが人間と動物の大きな違いよ。人間ももしアフリカに投げ出されたら似たようなことをするんじゃないかしら」
そうなってしまえば恐ろしい。日本で人間として生きられることに感謝しなければならない。
「特に哺乳類の中で同種間での殺し合いがもっとも盛んなのはミーアキャット。なんと約二十パーセントが他のミーアキャットに殺されるという凄まじさ」
神楽坂さんは恐ろしい実態を嬉しそうに言う。不謹慎だ。
ミーアキャットって細くて小さくて目が大きいのが特徴の愛らしい動物だったような。殺し合いのイメージがないミーアキャットが殺し合いを?
「ファミリーの掟っていうのがあってね。ミーアキャットは社会性の高い群れを構成する生き物なの。群れのメンバーは繁殖の権利を得る為に絶えず互いの品定めをして自身に社会的地位の維持・向上に務める必要があります。何しろ群れの中で繁殖活動が許されるのは群れの一組の優位オスと優位メスのみ。さらに優位メスはその他のメスを攻撃して群れから追放する。また、掟を破って子供を産んでしまった劣位メスがいればその子供を殺す行動をとるの」
「血も涙もない行動ですね。ミーアキャットが怖くなりました」
「一見、そのように見えるけど、野生のミーアキャットは食べ物が限られているような厳しい環境だから群れが生き残る為にはやむを得ないことなのよ」
「自然界は怖いですね」
「あ、そうだ。犬くん。言い忘れていたけど、今日の十四時に依頼者に会う予定だから来てね」
「今日ですか?」
「うん。何か用事?」
「いえ、大丈夫です」
「そう。じゃお願いね」
この後、本当は新作のゲームソフトを引き取りに行こうとしていたが、神楽坂さんとの予定が優先だ。予約しているし、無くなることもないから手が空いたら行けばいいだろう。大体、神楽坂さんはいつも急すぎる。もう少し事前に言ってくれてもいい気がするが、言えるはずがない。これだから僕は都合のいいように扱われてしまうが、神楽坂さんになら構わない。
「初めまして。神楽坂動物相談所の神楽坂鈴蘭です。どうか宜しくお願いします」
待ち合わせに選ばれた場所は個人経営の小さな喫茶店だ。
今回の依頼者は佐倉小咲(二十四歳)さん。結婚式場のスタッフ社員さんだ。
「あの、動物のことならなんでもと聞いたのですが」
「はい。どんなことでも承ります」
「実は最近変な手紙が届くんです」
「手紙ですか」
「はい。今日お持ちしました。ご覧になってください」
受け取った手紙には新聞紙から切り取った文字でこう書かれていた。
『お前のペットの命を貰う』
「こ、これは」明らかな脅迫だと僕は思った。
「警察には相談されましたか?」
「はい。でも相手がペットだからと軽い悪戯扱いで取り合ってもらえませんでした」
すると神楽坂さんは依頼者の佐倉さんを直視する。
「あの、何か?」
神楽坂さんは何も言わず席を立ち上がり、至近距離で佐倉さんの匂いを嗅ぎ始めた。
「え? なんですか?」と、当然のように困惑する佐倉さん。
「獣臭の匂いがする」
「嘘! 私、そんなに臭いですか?」
「あ、大丈夫ですよ。神楽坂さんは通常よりも動物に対しては鼻が効くんです」
と、やんわりとフォローする。神楽坂さんの思わぬ行動はいつも予測できない。
「この匂いはおそらく猫……いや、それにしては濃いわね。と、いうことはミーアキャットですね」
「凄い。当たり」
「ミーアキャット?」と僕は嫌な想像をしてしまう。
「ペットとして飼う人は珍しいですね」
「そうなんです。変わった動物を飼ってみたかったんです」
「そのミーアキャット、拝見してもよろしいですか」
住宅街から少し離れたところにある二階建てのアパートに佐倉さんの自宅がある。駅から徒歩十分圏内。周辺にはコンビニやスーパーもある立地の良い場所だった。
「ここです。どうぞ」
二階の一番左側が佐倉さんの自宅だ。
「お邪魔します」と僕と神楽坂さんは上がり込む。
一LDKで広めの部屋。女の子の一人暮らしである。
部屋の奥にはゲージの中でゴソゴソと動く物体を発見してしまった。
「わぁ、これがミーアキャットですね」
神楽坂さんは真っ先にゲージの前に駆け寄った。
「お名前はなんというんですか?」
「オスのリュウマです」
「リュウマくん、こんにちは。鈴蘭です」
リュウマくんは直立している。ピンクの首輪をしてまるで猫のように見える。
「私、ミーアキャットは動物園でしか見たことないです。少し感動です」
神楽坂さんは目を輝かせながら見ている。だが、僕には仲間殺しの生物にしか見えない。可愛い顔をして裏で何をするか分からないから少し抵抗があった。
「犬くんも来てよ。可愛いよ」
「いや、でも」
「もしかして朝の話を気にしているの?」
ズバリ当てられてしまった。あんな話を聞いた直後に目の前に同じ生物がいたらそれは気にしない者はいない。
「朝の話ですか?」と佐倉さんは聞く。神楽坂さんは朝のミーアキャットの生態について説明する。
「あぁ、そういうことですか。それは野生の話だから大丈夫ですよ。飼いミーアキャットですし、それに一匹しかいないのに仲間殺しのやりようがないじゃないですか」
「そ、そうですね。佐倉さんはその生態は知っていたんですか?」
「勿論。でも、こうやって飼ってしまえば可愛いものですよ。犬さんもどうぞご覧になって下さい」
「は、はぁ、それじゃ少しだけ」
僕はミーアキャットのゲージの前に屈んだ。
愛らしい瞳は僕に何かを訴えている。可愛いんだけど、何か裏がありそうで怖い。
「良ければ触ってみますか?」
「いいんですか。触りたいです」
神楽坂さんは大はしゃぎだ。
「なるほど。毛並みは固くてしっかりしています。爪も整っていて綺麗ですね。パッチリお目々で顔色も良さそうです。まるでタヌキのようです。キュートです」
「あれ、ありがとう。神楽坂さんは動物わかりが良いんですね」
「はい。動物は大好きです。犬くんも触ってみなさい。ほら!」
神楽坂さんは押し付けるようにミーアキャットを差し出す。
「では、少しだけ」
僕は頭を撫でる。可愛い。少し癒される気分になった。しかし、触った後の手は獣くさかった。
「ミーアキャットってキャットというくらいですから猫の仲間ですか?」
「違うわね。その疑問は私が答えるわ」と神楽坂さんは説明口調になり続ける。
「ミーアキャットはアフリカ南部のカラハリ砂漠など、乾燥地帯に生息しているマングースの仲間で雑食動物。名前の由来は正確には分かっていないけど、サンスクリット語の『markata(サル)』から『meerkat』になったという説があるわ」
「え? ミーアキャットって猿なんですか?」
「当時の人が猿と間違いした上に猫と名付けてしまった人の勘違いから出来てしまった名前よ」
「適当ですね」
「動物の名前は人間が考えているからそういう成り行きからついてしまうことは多々あるのよ。今更、改名することも出来ないし、そのまま定着した結果が今の呼び名になってしまった訳」
「なるほど。そうなってくると勘違いして覚えてしまう人もいるかもしれないですね」
「だから正しい知識を知る必要があるの」
「え? 猫じゃないんですか」
佐倉さんは今、初めて知ったようなことをいう。飼い主なのに知らずに飼っていたのかと僕と神楽坂さんは冷たい視線を向ける。
「まさか、知らなかったんですか。佐倉さん」
「いえ、冗談よ。マングースの仲間くらい知っていますよ。ギャグだから気にしないで」
明らかに知らなかったようだが、神楽坂さんは告げ足すように言う。
「飼い方としては猫とあまり変わりません。猫用のフードやリンゴやバナナなどの植物性と茹でたササミやミルワームの動物性の餌が食べられます。後はゲージ、トイレ、給水器、砂などを用意して二十五度から二十八度の温度管理をしてあげれば大丈夫です。この部屋ではそれらの対応はされているので問題ないかと思います。ストレスを与えない為に毎日ゲージから出してあげることも大切です」
説明を受けた佐倉さんは呆然としている。明らかに神楽坂さんの知識が優っている気がした。
「ちなみにミーアキャットというのは別名『サバンナのギャング』とも言われています」
「え?」と僕と佐倉さんは声を上げてしまう。
「見た目だけで言うと身体は小さく大人しいイメージに見えるかもしれませんが、気性が荒いです。野生だと爪や牙を使って獲物を狩ります。それに猛毒と言われるサソリも食べてしまうんですよ。本来、ペットとして飼う動物ではないですが、野生を忘れたら大人しいものです。ただ、犬や猫のように芸をする動物ではないのでそこは望めないと思います。ただ、時間をかけてきちんと信頼関係を築けると後ろについて来たり、近寄って来たりするなど人懐っこい動物とも言えますよ」
「あ、それなら一つだけ芸が出来ますよ」
佐倉さんは思いついたように両手を叩いた。
リュウマくんを床に下ろす。
「リュウマくんはテレビを見るんです」
テレビを付けると音に反応して猫用のソファの背もたれに腰を下ろしテレビの方向に視線を向けてじっと見ている。まるで人間のようだ。
「お利口さんでしょ」
これは芸と言えるのだろうか、ただリラックスしているだけのように見える。そうですねと話を合わせるので精一杯だ。
「お聞きしたいことがあるのですが、このミーアキャット……いや、リュウマくんはどのような経緯で飼い始めたんですか?」
神楽坂さんは真面目な口調で聞いた。
「はい。飼い始めたのは丁度一年くらい前でした。私の就職祝いで両親が買ってくれました。実家には猫を飼っていたんですが、数年前に亡くなりました。一人暮らしは寂しいからと何か飼おうと思った時に猫以外に珍しい動物を飼いたかったんです。そんな時にたまたま通りかかったミーアキャット専門店を見つけて一目惚れして飼い始めたんです」
「ミーアキャット専門店なんてあるんですね」
「確かにミーアキャットを飼っている人は犬、猫に比べて極端に少ない事例ですね。でも、その中に苦労はあるんじゃないですか」と、神楽坂さんは部屋を見渡した。
テーブルや椅子は傷だらけ。壁や床はダンボールで覆い隠されている。オシャレな内装とは言えず汚く見える。人間が住む場所とは言えず、ミーアキャットが住む家で人間と動物の立場が逆転している。
「はい。ご覧の通り、家具や部屋はボロボロです。リュウマくんは引っ掻き回しますからどうしてもこうなってしまいます」
「その手の傷もミーアキャットにやられたものですか?」と僕は佐倉さんの左甲に貼ってある絆創膏を指摘する。
「はい。ちょっと噛まれました」
「野生を忘れたとは言え、本来の身体は変わりませんから噛まれたりしたら痛いと思いますよ」
「そうですね。でも、可愛げありますからこれくらいなんてことありません」
「そうですか。他にミーアキャットを飼っている上で悩みはありませんか?」
「まだ大きな病気はないんですけど、もし体調を崩した時は取り扱ってくれる獣医がいないところです。後は電気代や餌代等に資金が掛かることや日常生活に制限が掛かることでしょうか。特に部屋が臭くなるので人を家にあげられません。そんなところでしょうか」
「確かにその点に関しては仕方がないところかもしれませんね。ただ、獣医であれば良いところを知っているので紹介しましょうか?」
「良いんですか?」
「はい。私の名前を言えば優遇はしてくれると思いますよ。これがその名刺です」
と、神楽坂さんはある獣医の名刺を佐倉さんに渡した。
「どうもありがとうございます。今後、必要な時は頼らせてもらいます」
神楽坂さんはにこやかに微笑んだ。
「それよりも例の依頼内容についてですが」と、僕は本題を持ち出した。
「はい。先ほどの手紙もそうなのですが、無言電話や家の前にゴミを置かれたりします。でも、最近特にペットに対する脅迫手紙が増えて来ました」
「手紙というのはどこに置かれているんですか?」
「扉のポストに入れられています。二、三日に一度は入っているかと」
「なるほど。ミーアキャット脅迫事件ですね」
神楽坂さんは今回の事件の名称を言う。それがなんだと言う話だが、それが大事なのだろう。
「ところでリュウマくんの散歩は連れて行くんですか?」
「はい。毎日、仕事に行く前の朝、六時から連れて行きます」
「近所では有名人……いや、有名ミーアになっているんじゃないですか」
有名ミーアとは初めて聞く単語だ。
「はい。散歩に連れて行くと注目を集めます。よく写真をお願いされたり、触らせて欲しいとせがまれますよ」
確かに道でミーアキャットを連れて散歩している人がいればまず、視線を向けることは間違いない。僕も思わず二度見することだろう。
「注目が集まれば口コミが広がって住所も特定されるかもしれませんね」
「はい。引っ越しも考えたんですが、ペットが大丈夫な賃貸はあまりありませんので」
「このような嫌がらせをされる心当たりはありませんか? 例えば同じアパートの住人とか」
「実は……」と、佐倉さんは切り出した。
心当たりがあるのは佐倉さんの部屋の真下に住む人だった。半年前に入居してきた人で根暗義男(三十二歳)という男性だ。食品の製造工場に勤めており、以前までは会社の独身寮に住んでいたが、トラブルがあって独身寮から追い出されて入居してきたという。入居してきてすぐにミーアキャットが動き回る音がうるさいとクレームを言うことがしばしばあり、言い争いが絶えないらしい。顔を合わせれば小言を言われ、近所間では仲が悪いと言う。
「ペットがいることをあまりよく思っていなくてもしかしたらそれで嫌がらせをしているのかもしれません」と、佐倉さんは語る。
「そうですか。近所トラブルがありましたか。他には恨みを買うことはありますか」
「実は……」と佐倉さんは切り出す。他にもあるのかと、僕は構えてしまう。
それは佐倉さんがリュウマくんを連れて散歩をしている時だと言う。
近所に住む中年の女性で毎朝同じ時間に犬を連れて散歩をしているという。
その女性は仮名・斉藤さん(四十八歳)という人で主婦をしている。
会えば必ず挨拶はするし、ペット同士でじゃれあいをさせる仲だというが、最近はミーアキャットについて質問攻めにされるらしい。まるで自分もミーアキャットを飼いたいような発言が多く羨ましく思っているらしい。
「ミーアキャットに興味を持ってくれている人ですが、最近はこの子を家で飼いたいとか冗談なのか本気なのか分からない発言が多いです」と佐倉さんは言う。
「確かに怪しいですね。充分に嫌がらせの犯人候補になります。これで最後ですか?」
「いえ、実はもう一人……」
まだいるのか、と僕は耳を塞ぎたくなった。
その人は職場にいる女性の先輩だった。唯一、この部屋を出入りするというその女性は香山千聖さん(二十八歳)で佐倉さんの五年先輩社員だ。動物は好きだが、自分で飼うことは好まないタイプだ。理由はオシャレにこだわっていることと世話が面倒でやりたくないという理由でただ可愛がりたいタイプだ。神楽坂さんとはまた違った動物好きだ。
「仕事では優しくて後輩思いの優しい先輩です。でも、休日はミーアキャットを見たがって家に来ようとします。約束もしていないのに訪問することもしばしばあってちょっと困っています」
「念の為、聞いておきますが、他に今回の事件に関与していそうな人物はいませんか?」
「はい。私の知る限りはいないと思います」
今回の有力な人物はこの三人に絞られた。おそらくこの中で脅迫する犯人がいるに違いない。神楽坂さんもそう睨んでいるだろう。
ミーアキャットのリュウマくんは自分が狙われているとも知らず、床で無防備に寝そべっている。可愛いが、もう少し緊張感を持った方がいいのではないだろうか。まぁ、動物にそんなことを言ったところで聞く耳は持たないだろう。
「犯人はミーアキャットを誘拐したいのか、殺害をしたいのか或いは別の目的があるのか分からないわね」
「別の目的ですか?」
「ミーアキャットが目的と見せかけて実は佐倉さんが目的という線もある」
「わ、私ですか?」と、佐倉さんは戸惑いを見せる。
「可能性の話ですよ」
「神楽坂さん、どうしますか? 犯人候補にそれぞれ事情聴取しますか?」
「いや、いきなり私たちが出向いても否定されて終わるに決まっている」
「じゃ、どうしますか?」
「そうね、まずは餌を差し出して様子を見ましょうか」
神楽坂さんは何か秘策があるように口元が笑った。
神楽坂さんが思い付いた秘策。それは佐倉さんを使ってわざと犯人候補者たちを誘き寄せるものだった。『餌』というのは佐倉さんであり、当事者を使って様子を見るというものだった。
僕たちの役目はその様子をモニタリングすることだ。
まず、一人目の犯人候補者は佐倉さんの部屋の真下に住む根暗義男という人物。この男はミーアキャットの生活音がうるさいということでトラブルになっていた。ミーアキャットは活発で動き回るのが好きなので音が出てしまいがちだ。その為、部屋にはダンボールをたくさん敷いてある。
この日は意図的にわざと音を響き渡らせてみる。すると、案の定インターフォンが鳴った。
「すみません。下の部屋に住んでいる根暗です」
「はい。なんでしょうか」
「なんでしょうか、じゃないよ。うるさいんだよ。少しは静かにしてくれないか。夜勤明けで疲れているんだ。寝不足で体調崩したらどうしてくれるんだ! えぇ!」
根暗という男はイライラした様子で怒鳴り込んだ。話で聞いた通り、気性が荒く怒りっぽい様子だ。この男を相手にするのは面倒な感じが伝わってくる。
「申し訳ありません。でも、遊ばせてあげないとストレスを溜めやすいんです」
「知るか! なんとかキャットか知らないけど、うるさいんだよ。大体、ほんのり獣臭がこっちまで来るんだよ。その獣をどっか追い出すか、引っ越すかをしてくれないと困るんだよ」
「そう言われましてもここは、ペット大丈夫なアパートです。それに気になるのであれば私より後に入居してきたあなたが引っ越したらどうですか」
「な、なんだと。生意気言うな。いつか後悔させてやるからな」
そう言い捨てて根暗は自分の部屋に戻っていった。
「お疲れ様です。良い演技でした」と神楽坂さんは拍手をしながら佐倉さんの元に歩み寄った。
「あの、演技ではないですよ?」
「いつもあのような痴話喧嘩をなさるんですか?」
「痴話喧嘩なんて生易しいものに見えましたかね? でも最終的には私が少し強めの発言をすれば諦めて帰っていきます。私もどうにかしたいと思うのですが、完全に音も匂いも消すのは難しくて困っています」
「そうですか。無理をさせて申し訳ありません。では次に行きましょうか」
謝っておいてさらに同じようなことをさせようとしている神楽坂さんは冷たく感じた。いや、これも捜査の為であるが、もう少し感情的になってもらいたいとつくづく思う。
「あら、小咲ちゃん。おはよう」
「斉藤さん。おはようございます」
佐倉さんはリュウマくんを連れて散歩道にある公園で二人目の犯人候補者の斉藤さんと接触していた。僕たちは公園の木陰で二人のやりとりを見守る。
「あれはパグね」と神楽坂さんは犯人候補者が連れている犬について発言した。
ミーアキャットとパグは顔を合わせるとお互いの匂いを嗅ぎあってじゃれあい始めた。仲の良さが伺えた。
「ミーちゃん。おはよう。今日もキュートだね」
斉藤という中年女性は飼い主の許可も取らずにミーちゃんならぬリュウマくんを抱き抱えた。リュウマくんは少し嫌がるように胸の中で暴れた。
それでも全力で可愛がる姿は迷惑でしかなかった。
「あ、すみません。あまり触ると噛まれるかもしれないので」と佐倉さんは辞めさせるように注意を促すと不機嫌そうにリュウマくんを放した。
「私も飼ってみたいのよね。でも旦那に反対されてしまったのよ。こうやって目に焼き付けることしか出来ないのが残念よね」
「はは、そうですね。思う存分、目に焼き付けてください」
ミーアキャットを触ったり写真を撮ったりと堪能した後、ようやく解放された。リュウマくんもやれやれといった感じだ。
「それじゃまたね。じゃーね。ミーちゃん」
「はい。失礼します」
斉藤さんが過ぎ去ったのを確認して佐倉さんの元に歩み寄る。
「お疲れ様です。良い演技でした」
「いえ、演技ではなくいつもの光景ですよ」
神楽坂さんは演技としてみているようだ。
「ミーちゃんというのは?」と神楽坂さんは疑問をぶつける。
「あぁ、斉藤さんが勝手に付けた名前です。ミーアキャットだからミーちゃんです。あの人の前ではミーちゃんとして諦めています」
「訂正しないんですか?」
「ずっとリュウマくんと言い続けていましたが、なかなか聞いてくれず、もういいかなと諦めています」
「そうですか。どういう人なのかよく分かりました。では最後の人に行きましょうか」
神楽坂さんはキャラがブレることがない。淡々と話を進めるだけだ。
「ご来店ありがとうございます。担当させて頂きます、香山です。どうかよろしくお願いします」
僕たちが訪れたのは結婚式のプランを考える会社、佐倉さんの職場に客として訪れていた。ん? 客としてということはまさか。
「お客様はいつご結婚をお考えですか?」
「そうですね。大体、半年くらい先で考えています」と神楽坂さんは言う。
ん? 何故か僕は半年くらい先に神楽坂さんと結婚することになっていた。いや、結婚するなら嬉しい限りだが、そもそも僕たちは付き合っていないにも関わらず、いきなり結婚というのは段階的に飛ばし過ぎている。こういうのは付き合って同棲してお互い信頼し合ってからするものじゃないだろうか。まだ心の準備が出来ていない。
「お二方はお若く見えますが、いくつくらいでしょうか」
「私が二十歳。犬くん……いや、ダーリンが十九歳です」
ダーリン? 神楽坂さんも少し動揺しているのか?
「お若いですね。ご職業は何をされていますか?」
「二人とも学生です」
「あの、失礼かもしれませんがもしかして出来ちゃった婚ですか」
香山さんは不安そうに聞いた。
「やだ。言わせないでくださいよ」
神楽坂さんは恥ずかしそうに言う。
え? 出来ちゃったの?
いや、いや、僕と神楽坂さんとの間でそのようなことは一切ない。
出来たとしたら相手は僕ではないことは確かだ。
と、まぁ、茶番はこの辺にしといて、僕たちは犯人候補である佐倉さんの先輩社員の香山千聖さんに接触していた。香山さんは結婚式場で働いている。その為、接触するにあたり必然的に新婚夫婦を装うことになっていた。演技とはいえ、神楽坂さんと夫婦役になれるなんて夢のようである。佐倉さんにも協力してもらい、意図的に香山さんを僕たちの担当者にさせた。担当者と顧客という関係であれば相手を知るには不自然ではない。
「今日は式場の見学ということですが、式場自体は初めてでいらっしゃいますか?」
「はい。初めてです」と、神楽坂さんは満面の笑みだ。
「ではご案内します。どうぞこちらへ」
香山さんに連れられ、僕たちは式場へ向かった。
式場の雰囲気というのは華やかでまるでお城に来たような感覚である。普段見る景色とは違い、アニメの世界に入ったようである。僕も将来、こんなところで結婚式を挙げたいと思うがまるで女の子のような考えだ。そもそも僕は結婚出来るのか。いや、その前に彼女が出来ることすら怪しい。まだ十九歳とはいえ、気付いたら三十、四十歳になっていたらどうしようか。嫌な想像が頭に過ぎる。
「私たちもこんなところで式を挙げるのね。ダーリン」
神楽坂さんに言われることが演技だと思ってしまうと急に悲しくなる。それでも演技とバレないように僕も全力で役を演じる。
「そうだね。ハニー。幸せな家庭を築き上げようね」と、全力の笑顔で微笑む。
「犬くん。やりすぎだから」と神楽坂さんは引くような目で小声になりながら注意を受けた。やばい。神楽坂さんにキモがられてしまった。
「おや、仲が良いこと。羨ましいですね」
「香山さんはまだ結婚されていないんですか」と、神楽坂さんは探りを入れ始めた。
「そうなんです。それどころか彼氏もいなくて。まぁ、三十までには、と考えているんですが、後二年しかなくて焦っています」
「現在はご実家ですか?」
「はい。彼氏が出来たら同棲とかしてみたいですけどね」
「結婚を考えているのであれば一緒に住むことはした方がいいと思いますよ。実際に住んでみて合う、合わないというのはハッキリしますから。ついでに言うと外で可愛がるのと飼うのとはまるで違いますから」
ストレート過ぎる神楽坂さんの問いに僕は耳を傾ける。
「やだ。若奥様、飼うだなんてうまいこと言いますね。でも、安心して下さい。どちらかと言うと私は飼われる方が好きですよ」と、香山さんは大笑いする。
どうやらペットではなく人間の男と勘違いしてくれたようだ。
「香山さん。動物はお好きですか?」
「えぇ、好きですよ。どうしてですか?」
「そんな感じがしましたので。ご実家では何かペットを飼っていますか?」
「それが飼っていないんです。飼いたいとは思うのですがなかなか手が出ず終いで。実家を出たら飼ってみようかと考えています。そういえば職場の後輩がミーアキャットを飼っているんですよ。珍しいですよね」
知っていると思わず言いそうになる。まさにそのミーアキャットの飼い主からの依頼真っ最中なのだから。
「ミーアキャットですか。確かに珍しいですね」と、神楽坂さんは知らないていで驚きの反応をしてみせる。演技と分かっているからいいが、少し大袈裟な気がするが大丈夫だろうか。
「あれですよね。相棒がイノシシの!」
僕も話に入ろうとするが、一瞬間が空き、無視された。あれ? 何か間違えただろうか。
「若奥様も相当動物好きですね。私、犬や猫という定番のものより少し珍しい動物が好きなんです」
「なるほど、珍しいといえば……」
僕を差し置いて二人は動物の話で盛り上がっていた。
一人、僕は場内にある噴水の囲いに腰を下ろした。無意識にスマホゲームに没頭してしまい、時間が過ぎていた。
「何をやっているのよ。飼い主が戻るまで番犬でもしているにしては無防備じゃないかしら」
「僕は神楽坂さんの番犬は失格ですかね」
「何を言っているの。情報は全て聞き出せたわ。不自然にならないように式場の見学を楽しみましょう」
「はい」
その後、結婚式の流れと施設を見廻って無事、新婚夫婦の演技をやり遂げた。
式場を出た瞬間、神楽坂さんから大きな溜息が吐かれた。
「結婚も楽じゃないわね」
「神楽坂さんもあぁいうものに憧れたりするんですか」
「別に。興味ないわ。するのであれば動物としてみたいわね」
「いや、それはちょっと違うんじゃないですか」
「冗談よ。人間と動物が結婚出来る訳ないじゃない。何を言っているのよ」
「そ、そうですよね。すみません」
「それはさておき、この事件の真相が分かったわ」
神楽坂さんの結婚の真意は聞けなかったが、謎が解けたことが大きな前進だ。
佐倉さんが乗務を終えた後、僕と神楽坂さん佐倉さんの自宅を訪れていた。
「お疲れ様です。仕事で疲れているところすみませんでした」
「いえ、それよりも今回の事件が分かったと聞いたのですが、本当でしょうか」
「はい。今日はそれをお話に来ました」
ミーアキャットのリュウマくんもその席に同席した。と、言っても部屋の中で遊ばせているだけだが。
「それで、誰がこんな脅迫の手紙を出したんですか?」
「その前に佐倉さん。今回、火種となったミーアキャットですが、飼い方を変えた方がいいと思ってお伝えしておきます」
「どういうことでしょうか」
「まず、ミーアキャットというのはペットとして飼う人は珍しい動物であることは間違いありません。珍しい好きのあなたとしては魅力あるペットかと思われます」
「えぇ、それは承知した上で飼っていますけど」
「なので今後、散歩させると人が群がる恐れがあります。今の時代、気軽にSNSで情報を投稿出来ます。そうなると目的はミーアキャットであっても飼い主であるあなたの個人情報が拡散されることがありますので注意が必要です。特に写真撮影を頼まれた際は注意してください。撮影者はその写真をどうするか分かりませんからね。まぁ、盗撮されたりしたらどうしようもありませんが、ミーアキャットを連れて歩くのであれば身バレしないように顔を隠すと効果的ですね」
「そんな有名人みたいなことが必要なんですか?」
「あなたはただの一般人ですが、リュウマくんは芸能人と同等の扱いになりますね。言ってみればあなたはリュウマくんの専属マネージャーですよ」
「分かりました。気を付けます」
「後、自宅での飼い方ですが、ミーアキャットというのは活発で動き回るのでどうしても音がします。後、匂いもキツイです。体験した通り、近所トラブルも絶えないでしょう。対策としてはミーアキャット専門の部屋を作り、存分に遊べる空間にしてあげることでしょう」
「そうしてあげたいですが、部屋はギリギリでスペースもあまりありません」
「そうですね。対策をするのであれば広い部屋に引っ越すか、或いは……いや、辞めておきましょう」
「なんですか。ハッキリ言ってください」
「元々、ミーアキャットを迎い入れる環境じゃなかったんですよ。飼いたいという欲望だけでそれに見合った部屋ではなかった。結果、ミーアキャットはストレスを溜め込んで息苦しい思いをすることになった。と、私はそう言いたいんですよ」
提供者と顧客の関係を無視したように神楽坂さんは感情で言い放った。容赦ない発言に佐倉さんも険しい表情になる。
「な、なんですか。私がリュウマくんを苦しめていると言いたいんですか。私はこれまでこの子の為に尽くしています。あなたに言われる筋合いはありません。バカにしないでください」
「ペットに尽くすことは飼い主の義務であり、当たり前のことです。まぁ、私に言われる筋合いはないかもしれませんが、あくまでもあなたの為に言った訳ではありません。リュウマくんの為に言ったまでです。飼い主であれば気付いていますよね。リュウマくんの叫びを」
リュウマくんに視線を向けられた。活発な行動はミーアキャットにとって本能であり、その狭い部屋が行動を制限していた。よって、部屋全体は傷だらけでボロボロだった。
「私、リュウマくんをずっと苦しめていたの?」
佐倉さんは膝を付いた。
「どう感じるかはあなた次第です。今回の犯人について解説します。まず、真下に住んでいる根暗さん。ミーアキャットを巡って言い争いが絶えなかったそうですが、今回の件には絡んでいないと思います」
「え? どうしてですか」と、僕は聞いた。一番、犯人候補だと思っていたからだ。
「彼は言いたいことを全て佐倉さんにぶつけています。今更、こんな回りくどいやり方はしてこないはずです。本気でうるさいと思っているにも訳があります。ミーアキャットというのは本来、昼行性で人間と同じスタイルの生き物です。昼に騒がしくするミーアキャットに反応するのは昼間でも家にいるからです。彼は日中、家にいて夜、仕事する人です。だから、より繊細に音が気になるんだと思います」
そっか。夜勤上がりで眠たいところ、音がうるさくて眠れなかったら怒るのも無理はない。こればかりは住んでみないとお互い分からない。今回、不都合が重なり合ったのが原因である。
「次に散歩中に絡んでくる斉藤という主婦ですが、ただのお節介好きで害はないと思います。お節介が時に迷惑を生みますが、そこはうまく付き合うことをお願いしたいところですね。もしくは関わりを無くすようにするか。今回の脅迫には関係ありませんのでご安心を」
「神楽坂さん。と、いうことは犯人って」
「えぇ、残りの候補者である香山さんが絡んでいます」
「ちょっと待ってください。先輩はそんなことする人じゃありません。この件だって相談にも乗ってくれましたし、それに動物好きですよ」
「えぇ、直に話しましたので分かります。でも、香山さんはアニマルフォトマニアです」
日本語に直すと動物の写真好きということだろうか。神楽坂さんはあの時、そんな情報を聞き出していたみたいだ。
「つまり実物には興味がない。画像に移る動物にしか興味がないということです」
「ちょっと待ってください。動機が分からないです」
「それはミーアキャットの立ち位置をよく知っていたからじゃないかしら。この家に似合わないと感じ、なんとかあなたとミーアキャットを退けようとした。誘拐を促すことで引越しを誘導しようと考えた。思うようにことが運ばずに失敗を繰り返してきたようだけど、近々、本当に誘拐しようと企んでいたかもしれない」
「どうして先輩がそこまでのことをしたんですか」
「ここから私の推測ですが、嫉妬だったと思います」
「嫉妬?」
「はい。あなたとミーアキャットが仲良さそうにしているのが苦しかったのではないかと思います。ミーアキャットを可愛がる姿が香山さんとして複雑な気持ちだった。部屋に似合わない暮らしも見受けられ、引き剥がして自分のものにしようという欲求が少なからずあったのではないでしょうか」
「ちょ、え? それってどういうことですか」
「おそらく香山さんは佐倉さんのことがとてつもなく好きなんだと思います。だから、ミーアキャットと引き離したかった」
「神楽坂さん。女同士ですよ。いくらなんでもそれはどうかと思いますが」と、僕は話に入る。
「あくまでも私の推測だって言ったでしょ。でも、ほぼ間違いないと思いますよ。式場では常に佐倉さんのこと見ていましたし、それにレズも珍しい話じゃないですよ」
それはどっちが女でどっちが男の目線だろうか。まさかの推測に僕は驚く。しかし、佐倉さんは視線を下に向けるだけだった。
「後は二人で話し合ってください。ここから先は私が出る幕じゃありません」
すでに事件は解決したように神楽坂さんは切り上げようとする。こんな形で終わってしまっていいのだろうか。
「あの、神楽坂さん。これでいいんですか」
「被害届を出すかどうかは被害者次第よ。伝えることはちゃんと伝えた。他に何かある?」
「いえ、神楽坂さんがそれでいいのであればそれでいいです」
よく分からないうちに無事、事件は解決した。
その後、佐倉さんからどうなったか報告を受けた。
二人で話し合った結果、香山さんは自分の行いを自白した。神楽坂さんの読み通り、脅迫行為は全て香山さんの仕業だった。しかし、佐倉さんは被害届を出さなかった。今回は佐倉さんのことを思ってやったことなので話し合いで解決した。それよりも驚くべくことはシェアハウスとして二人は同じ家に住んだということだった。香山さんの告白を承諾した結果だという。女同士で付き合っているというのだ。
ちなみにミーアキャットのリュウマくんはというと二人と一緒に暮らしている。以前の家とは違い、広めの部屋を借りてリュウマくん専用ルームがあるという。これで飼育環境の悩みは解消されて二人で世話をしているという。奇妙な生活が始まっているというが、その内容は知りたいようで知りたくない。
「女同士で付き合うことなんてあるんですね」と言うと、神楽坂さんは反応する。
「別におかしいことじゃないわよ。レズだのBLだのという言葉があるくらいだから不思議じゃないわ」
「でも、実際にそういうのは聞かないので奇妙な話ですね」
「ちなみに動物にもそういうことは起こり得るのよ」
「なんですか、それ。詳しく聞かせてください」
「犬くん。実は変態だったのね」
「どういう意味ですか、僕は変態じゃありません!」
必死に訂正するが、神楽坂さんはその姿を面白がるだけだった。
いや、僕は断じて変態ではないことを信じて頂きたい。
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