opening of war

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 五分で来い。防衛省陸上幕僚監部、通称陸幕の幕僚長からの命令に、御木雅弘三佐はフルフェイスのヘルメットを被ると、愛車のスズキ・1100刀に跨がった。シフトペダルを踏み込み一速に入れ、幹部職員専用駐車場を全開で駆け上がる。特徴的な逆回りのメーターが跳ね上がり、すぐに二速にシフトアップした。前輪を浮かせたまま、スロープをターンする。ゲートで幕僚長付課長の身分証明書を見せると、駐屯地を飛び出し市ヶ谷駅を右折。冷たいアスファルトにタイヤが悲鳴を上げ、後輪がスライドした。接触寸前のタクシーがクラクションで抗議する。  市ヶ谷から総理大臣官邸まで約三キロ、朝の通勤時間帯の今は、普通に走ると十五分以上かかる。車列の横をすり抜け、黄色信号は躊躇無く通過した。チューンドエンジンを一万回転まで回すと、三速でも前輪が浮き上がる。リヤブレーキで無理矢理前輪を着地させると、すぐに二速までシフトダウンし、ハングオンで交差点へターンイン。ステップが火花を散らした。コートを着ているとはいえ、一月の冷気が容赦無く襲ってくる。  交通法規は無視し、全開で刀を飛ばす。虎の門二丁目西を大きく左折、四分で総理官邸に到着した。身分証明書を叩きつけるように提示すると、連絡が行っているのか、警備員が慌ててゲートを開ける。  地下一階にある危機管理センターに着いた時は、五分を三十秒過ぎていた。 「本当に五分で着くとはな」 幕僚長の小宮が呆れたように言った。 「無茶言わないで下さい。三回は死にかけました」 コートを脱ぎ、ネクタイを直しながら抗議した。 「お前はいつも、ユキムラとかなんとか自慢しているじゃないか。楽勝だろう」 ヨシムラですと訂正したかったが、我慢する。 「一体何があったのですか?朝イチから危機管理センターに緊急招集なんて」 「バイオテロ」 事もなげに、小宮が言った。
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