圭一郎の鳥籠

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「本当?」 「本当。そんなことはしない。」 院長が倒れた時に、圭一郎が采配を振るうことに、最後まで反対したのが、春岡だったと聞いている。 少し前にメンタル面で不安のあった圭一郎に、任せたくはなかったのだろう、と圭一郎は思っていた。 それについては原因ははっきりしていて、一つには珠月を失ったからだ。 自分の命ほどにも大事に思っているものを失いかけたのだ。 その気持ちは彼にだって、誰にだって分からないだろうと思う。 その後、彼女を諦めないと決めてから、不調はどんどん回復したし、珠月が側にいてくれる今は以前より調子がいいくらいだと思っている。 家族も珠月のことを認めているし、なんの問題もないはずだ。 なのに、関係のない人物に心配などされるような謂れは一切ない。 個人的な感情が入っているのか? それはどんなものだろうか、と考える。 一つには解決したとはいえ、春岡は圭一郎に不安を持っているのかもしれない。 一つは急に現れた婚約者の存在。 それとも、考えたくはないけれど、珠月への横恋慕……? そんなタイプではないと思うのだが。
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