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それでも二人きりで面談などして、わざわざ『大丈夫か?』と尋ねるくらいなので、思い入れがあるような気がする。
もしかしたら、圭一郎の単なる考えすぎの可能性もあるけれど。
いずれにせよ、珠月が言うように春岡を辞めさせるようなことはしないが、牽制は必要な気がするし、そうしておいて、少し様子を見ようとは思った。
圭一郎なりの方法で。
数日後のことだ。
圭一郎は当直でその日は帰ってこなくて、昼休みに仮眠室で休んでいるから、珠月に来て欲しい、と受付に連絡があった。
「いいんでしょうか?」
薫に聞くと、彼女は苦笑する。
「彼はここでは王子様よ。構わないわ。行ってきて。」
王子様、か……。
確かにこの北高会病院は、北原院長の王国のようなものだ。
そういった意味では、その北原院長の息子である圭一郎は、王子様のようなものであることは間違いはないのかもしれない。
いろんなことを経験して、最近の圭一郎はますます堂々としてきていると思う。
リーダーシップをとりながらも、通常の仕事はきちんとこなす姿に、珠月は見惚れてしまうのだ。
むしろ、こんな自分でいいのだろうか、と珠月は引け目を感じるくらいだ。
珠月は慣れてきた北高会病院の廊下をてくてく歩いて仮眠室に向かった。
仮眠室は検査棟の目立たない場所の、さらに奥にある。
とても、静かな場所だ。
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