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圭一郎のものが珠月の口の中を出入りする濡れたような音が部屋に響いた。
「も、出る……からっ」
珠月自身ももう限界だった。
びくんっと身体が揺れたとき、口の中のものもどくん、と弾けるのを感じた。
「珠月、珠月っ……飲まなくていいから、ほら、出して。」
ごほっと咳き込んで、口の中のものを圭一郎が用意してくれたティッシュにそっと出す。
「ああ、可愛い。珠月。」
圭一郎はペットボトルの水を口移しで飲ませてくれる。
そのまま、唇が緩く重なり、舌が絡んでゆく。
柔らかくて、甘いキスはとろけそうだ。
「珠月……」
珠月の口から漏れた水があごを伝ってのどをすべりおりる。
圭一郎はその跡を追うように、唇を動かしてゆく。
水を含んだばかりの冷たい唇に肌を撫でられ、珠月は甘い声をあげた。
「まだ、足りない珠月……」
その時、圭一郎の耳は誰かが部屋の前から立ち去った音を聞いた。
外からの音はほとんど、中には聞こえないけれど、足音だけは圭一郎は敏感に分かる。
それは職業病のようなものだからだ。
仮眠室に誰がが起こしに来る時は緊急事態。
その緊急事態にはすぐ対応出来るよう訓練されている圭一郎は、反射的に外の足音に反応する。
たった今まで、外に人がいた。
ふっ……と口元に笑みを浮かべた圭一郎は、愛おしい珠月の身体にそうっと唇をつけたのだった。
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