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鳥は夢見る
その日の帰り、圭一郎は車の前で待っている春岡を見つけて、口元に笑みを浮かべる。
「春岡室長。どうかしましたか?」
「……分かっているのではないんですか?」
圭一郎は冷たい笑みを返した。
「さあ……何のことでしょうか?」
「仮眠室でのことです。」
「まさか覗いていた?趣味が悪いですよ。」
くすくすとからかうように、圭一郎は笑う。
「わざとですよね。」
「まさか。可愛い珠月のみだらな姿を他の人に見せたいわけがないでしょう。仮にロックが外れていたとしても、俺と珠月は婚約者なのだし、放っておくのがマナーではないんですか?」
「彼女はあんな人ではないのに……。」
苦々しそうな顔をする春岡が、圭一郎には気に入らなかった。
「何だか、よく知っているような口ぶりですね。」
「よく知っています。彼女のおばあさんの転院の手続きの際、お手伝いをしましたから。」
「へえ……。けれど、珠月は覚えている風ではないけれど?」
「そのようですね。あの時はだいぶ大変な思いをされていましたから。」
「珠月が知らないのなら、一方的にあなたが知っている、というだけの関係か。なおさら、あなたに何か言われる筋合いはないな。」
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