鳥は夢見る

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「知っているよ。祖母が亡くなってからも彼女は大変な思いをしていたからな。天涯孤独になって、家まで親戚に取られそうになっていたんだ。」 圭一郎の静かな声に、春岡は顔をあげる。 「そう……だったんですね……。」 「交通事故にもあって、家を追い出されて、それを俺が助けた。それが珠月とのきっかけだ。それより前に出会っていたけれど、関係が深くなったのはそれがあったからだ。ショック状態だったよ。」 それほどのことがあったとは、知らなかった春岡だ。 春岡は単純に、圭一郎が金なりの何らかの力を使って、珠月との関係を取り付けたのかもしれないと考えていた。 「俺の不調は……珠月と離れたからだ。あの時は君が言うように俺と珠月は上手くいかないと思って、逃げた珠月を、もう逃してやろうと思っていた。けれど、珠月は帰ってきてくれた。一緒にいたいと言ってくれたから。君にも分かるだろう?珠月はとても綺麗なんだ。あんな風にされてさえ、綺麗だ。」 確かにそれはそうだった。 圭一郎のモノで口をいっぱいにして苦しそうにしている姿すら、ゾッとするくらいに綺麗だった。 正直に言えば、全く興奮しなかったかと言うとそれは嘘だ。
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