プロローグ~恋より刹那の快楽を~

11/41
469人が本棚に入れています
本棚に追加
/90ページ
「その、マイルド・ローションを試しに使ったとき。  薬が効き過ぎちゃって大変だったから、もう二度と使わない、って言ってなかった?  それに今日のお客のブルーノ・コスタさまに媚薬を使うコトを説明しなかった上。  静夜君は自分が愛されてるコトを承知で、煽ったんじゃない?」 「……」 「静夜君も、コスタさまのこと、キライなお客さまじゃ無いわよね?  なんで、そんな莫迦なことをしたの?」 「ブルーノなんて、嫌いだよ。  ほっとけば、僕の匂いをずーっと嗅いでる変態だし。  好きだ好きだ、なんて、いつも騒いで!  こっちの都合関係なく、ぎゅうぎゅうウザいほど、抱きしめて来るし……!」 「こら、仮にもお客さまを呼び捨てなんかしてはだめよ?  それに、静夜君。  本当に嫌いなお客様なら、そんなに楽しそうに、私に話してくれないわよね?」    マダムの水色の瞳にじっと見つめられて、ため息が、出た。  参ったなぁ。  マダム相手に隠しごとなんて、出来やしない。  僕はズキン、と響く胸の痛みを無視して、何でもないように話した。 「……別に、ただ。 僕、好きな人に告白して……振られちゃっただけだよ」 「静夜君が振られた!?  ウソ! 誰に!?  なんで!?」  僕の苦虫を噛んだような告白に、マダムは、静夜君が誰かに振られるなんて信じられないって驚いてた。  けどね。  僕自身、かなりモテる方だって思ってるけど、マダム、凄く、買いかぶり過ぎ。  僕は全く完璧じゃないし。  いいな、と思った恋が上手く行くわけじゃない。   確かに僕の顔は『整っている』って言うんだろう。  鏡で見た限りでは、目鼻の位置は、左右がきちんと対称で『黄金率』って配置に収まってるし。  肌、一応きめ細かくて、白く。  我ながら真っ黒な髪と、群青色の瞳は、まあ、キレイだと思うし、全く地味に見えない。  ……ブルーノの莫迦は真面目な顔して『宝石みたいだ』なんて言うけど。  さすがにそこまでキレイじゃないことぐらい、自覚してる。  でも、会うヒト会うヒト、まず、最初に出会って聞く事は皆一緒だ。 「で? 君、男? 女?」って!  僕はよっぽど、中性的な顔立ちをしているみたいだけど!  ……男だよ。  悪かったな、背も低くて!  これから二十才になるまでに、二十センチは、背が伸びる予定なんだからな!
/90ページ

最初のコメントを投稿しよう!