472人が本棚に入れています
本棚に追加
そう言えば、僕の奴隷のセトは、このお届け屋さんと、ぱっと見は似ているけれど、もともと普通の人間だったから、尻尾は無い。
今度、セトのお尻にも、こんなもふもふ尻尾をつけてみようかなって、つい。
尻尾ってどう生えているんだっけ? と思わず。
僕の受領サイン待って目の前をゆらゆら、ゆっくり動いている尻尾を掴んだ。
「……!」
突然の僕の行動に、今まで、ほとんど無表情……って言うか、反応の薄い獣人の彼も、さすがに驚いたみたい。
声は立てなかったけれど、反射的にピクリとしっぽを跳ね上げ、僕を見る。
「……お前、なにをする」
「お前、じゃないよ。
僕は静夜。
静夜・クレセントって今、呼んだじゃないか。
ねぇ、君は? 君は、なんて言う名前なの?」
「俺は、アルだ」
「アル! 良い名前だね!」
「………」
さっきまで、一応。
お客の荷物の届け主だから、って多少は丁寧な言葉を使っていたけれど、突然尻尾を引っ張られ。
それにまた、明らかに自分より年下な僕に、丁寧な態度を取る気も無くなったみたいだけど、いいもんね。
尻尾だよ尻尾!
しかも、最高級のカーベットみたいにふかふかなヤツ!
僕は疲れ切っている事を忘れて、思わず跳ね起きた。
そして、そのまま立ち上がろうとして、力が入らず。
その場で、ヘタヘタと座り込み……散々使った自分の尻が、ズボン越しとは言え、堅く冷たい床に触れ、あまりの痛さにうぁ、と声を上げた。
そんな僕を、アルは呆れたように見て、ため息をつくと、僕をひょい、と持ち上げ、長椅子へさっきの体勢で、戻してくれた。
「……静夜は、一体何をやってるんだ?」
「アル君のお尻が見たかっただけ!
僕にもっと良く見せて!!」
「……は?」
僕の剣幕に今まで、無表情に近いほど落ち着き払っていたアルがちょっと驚いたようだったけど、気にしない。
さっき一瞬、僕を抱えてくれたから、正面を向いていた身体を、寝転がったまま。
ぐいぐいとアルを押したり引いたりして、後ろを向かして座らすと、本人が何か言う前に、尻尾を勝手に手に取った。
最初のコメントを投稿しよう!