プロローグ~恋より刹那の快楽を~

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「わ~~すごい!  やっぱり、もふもふ最高!  おお! コートにも、ズボンにも尻尾通す穴が開いてるんだね?  チャックついて無いだけで、ズボンの前側みたいに縦に開いてるんだ。  じゃあ、ぱんつは? その先は?  尻尾激しく振ったら、やっぱりアナルまで見えちゃうのかな?」 「……そんな事は無い。いい加減にしろ」  自分でもかなり下品だと思う僕の言葉に、アルは目立った反応は示さなかった。  どうやら、かなり真面目な性格で、僕を無視する方向らしい。  だけども、基本無表情なくせに、時々ちらっと別な表情を見せるのが面白い。  人形が、人間になるために表情を作る努力してるのか。  人間が、人形になるために表情を消そうとしているのか。  どっちか判らないけど、からかいがいがあるヤツ!  アルは、何も言わなかったけれど、もう、僕になんて触らせるもんか、とでも言ってるみたい。  無言で、さっさと逃げられた尻尾のさわり心地が恋しくて「ええ~~もっと~~」と、可愛くねだってみた時だった。  男性従業員用の控室の扉ががチャッと開き、もう一人、誰かが入って来てた。 「なによ~~もっと~~って。  静夜は、散々シたはずでしょ~~?  まだ、足りないの~~?」  そう、とても呆れた声を出したのは、マダムだった。  マダムも仕事を終えて、どこかへ行くのかな?  モード調の如何にも高そうなブランド服を着ている。 「もう! さすがに大人数相手だったし、  疲れきって動けずに、家にも帰れなかったらどうしよう? かと思ったじゃない。  心配して、見に来て損しちゃったわよ」  うれしいな、マダムは僕を心配してくれたんだ。  マダムの声にほっとして僕の顔も、ほほ笑みの形に変わる。 「……いや、うん。  でも、もうセックスはお腹一杯だよ。  確かに、家に帰るのメンド~~なくらい、疲れて動けなくなっているし。  次のバイトまで、えっちはも、いいよ」  もっと~~って言ったのは、お届け屋さんの尻尾にもう少し触っていたかったんだ、ってそう言えば。  マダムは僕に、色っぽく流し目をくれた。  そして、机の上に乗った山もりの紙の花束と、お菓子の箱、そして、アルの存在に気がついてほほ笑む。 「あら。  便利屋さんのアルちゃんがプレゼントを届けに来たって話は、聞いていたけど『静夜』にだったのね?  営業時間中に、プレゼントが届くことはあるけど、こんな時間になんて、珍しいコト。  ……誰から来たの?」  マダムに聞かれて、僕は嫌々答えた。 「……ブルーノ……コスタさま」  今日、僕のことを買って、散々好きだって叫んでたヤツだ。  こっそり媚薬を使われて、終了時間を越えてなお、欲望が収まらないまま、我を忘れて僕を抱き続け。  ペニスを()てたままの、情けない格好で、部屋から追い出されたヤツ!  もう、二度とこのメーヌリスに来るもんか! と叫べばともかく。  何だって高価な花と、もっと高価な甘いお菓子なんて贈って来るんだよ、まったくもう!
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