472人が本棚に入れています
本棚に追加
「わ~~すごい!
やっぱり、もふもふ最高!
おお! コートにも、ズボンにも尻尾通す穴が開いてるんだね?
チャックついて無いだけで、ズボンの前側みたいに縦に開いてるんだ。
じゃあ、ぱんつは? その先は?
尻尾激しく振ったら、やっぱりアナルまで見えちゃうのかな?」
「……そんな事は無い。いい加減にしろ」
自分でもかなり下品だと思う僕の言葉に、アルは目立った反応は示さなかった。
どうやら、かなり真面目な性格で、僕を無視する方向らしい。
だけども、基本無表情なくせに、時々ちらっと別な表情を見せるのが面白い。
人形が、人間になるために表情を作る努力してるのか。
人間が、人形になるために表情を消そうとしているのか。
どっちか判らないけど、からかいがいがあるヤツ!
アルは、何も言わなかったけれど、もう、僕になんて触らせるもんか、とでも言ってるみたい。
無言で、さっさと逃げられた尻尾のさわり心地が恋しくて「ええ~~もっと~~」と、可愛くねだってみた時だった。
男性従業員用の控室の扉ががチャッと開き、もう一人、誰かが入って来てた。
「なによ~~もっと~~って。
静夜は、散々シたはずでしょ~~?
まだ、足りないの~~?」
そう、とても呆れた声を出したのは、マダムだった。
マダムも仕事を終えて、どこかへ行くのかな?
モード調の如何にも高そうなブランド服を着ている。
「もう! さすがに大人数相手だったし、
疲れきって動けずに、家にも帰れなかったらどうしよう? かと思ったじゃない。
心配して、見に来て損しちゃったわよ」
うれしいな、マダムは僕を心配してくれたんだ。
マダムの声にほっとして僕の顔も、ほほ笑みの形に変わる。
「……いや、うん。
でも、もうセックスはお腹一杯だよ。
確かに、家に帰るのメンド~~なくらい、疲れて動けなくなっているし。
次のバイトまで、えっちはも、いいよ」
もっと~~って言ったのは、お届け屋さんの尻尾にもう少し触っていたかったんだ、ってそう言えば。
マダムは僕に、色っぽく流し目をくれた。
そして、机の上に乗った山もりの紙の花束と、お菓子の箱、そして、アルの存在に気がついてほほ笑む。
「あら。
便利屋さんのアルちゃんがプレゼントを届けに来たって話は、聞いていたけど『静夜』にだったのね?
営業時間中に、プレゼントが届くことはあるけど、こんな時間になんて、珍しいコト。
……誰から来たの?」
マダムに聞かれて、僕は嫌々答えた。
「……ブルーノ……コスタさま」
今日、僕のことを買って、散々好きだって叫んでたヤツだ。
こっそり媚薬を使われて、終了時間を越えてなお、欲望が収まらないまま、我を忘れて僕を抱き続け。
ペニスを勃てたままの、情けない格好で、部屋から追い出されたヤツ!
もう、二度とこのメーヌリスに来るもんか! と叫べばともかく。
何だって高価な花と、もっと高価な甘いお菓子なんて贈って来るんだよ、まったくもう!
最初のコメントを投稿しよう!