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「痛っててて~~っ~~
ごめんよ~~ アル君。
もうちょっと、丁寧に僕を扱ってくれるかな?」
メーヌリスのマダム専用の車が置いてある車庫でのことだった。
僕はアルに、車の後部座席に放り込まれ、悲鳴を上げていた。
このセカイの車が完全に機械化されたオートドライビングカーで良かった。
大昔のタクシーのように運転手がいたら、きっと、あまりの騒がしさに乗車拒否をされたかもしれない。
だが、しかし。
アルの名誉のために語れば、別に、彼は僕を虐待しているわけじゃなかった。
最初は、アルに横抱き……お姫様だっこなんてされたくなかったんだけど、僕とアルでは身長差があり過ぎて、上手く肩を借りれなかったんだ。
大量の紙の花束と、お菓子の包みを抱えたまま更に、片手で僕を支えるのは無理だったので、結局。
僕が花とお菓子を持ち、アルが僕ごと、それを横抱きで運ぶことになった。
獣人らしく、一般の男よりも腕力がある。
僕と荷物を、こともなげにひょい、と持ち上げるのが、あまりに頼もしかったから。
「ねぇ、コート脱いで腕の筋肉見せて?」ってお願いしただけなのに~~
タクシーの後部座席に、無言で荷物ごとポイッと放り込まれちゃったんだ。
ん、で。
僕の使いこまれたお尻が、タクシーのクッションで、体重の他に荷物の重さを支えることになり……僕は悲鳴をあげたってわけ、なんだけど。
「えええ~~っ?
なんで、アルは不機嫌なの?
リアクションが、女の子に『おっぱい見せて』って言ってみた時と同じなんだけど……?」
アルは、自分の腕がそんなに恥ずかしいのかな?
って首を傾げたら、アルはギロッと僕を見た気がした。
「きゃ~~ 無表情で僕を睨むのやめて~~ 怖いじゃないか」
「俺は不機嫌になった覚えはないし、静夜を乱暴に取り扱った覚えもない。
腕は、見せてやっても良いが、肘より後ろに醜い鱗があるくらいでつまらんぞ。
それより……お前は、女性に、向かって、胸を見せろ、などと、平気で、言うのか?」
相変わらず無表情だけど、女性の胸の件辺り、一言ずつ区切ってる言葉が不機嫌具合を示しているようで、ちょっと怖い。
けど、気にしないもんね。
「だって~~ たまには、さ。
僕のこの『美貌』に騙されて『ええ~~恥ずかしいわ。でも静夜君にだったらみせちゃお。えい』って子もいるんだもん。
おっぱいって、イイよね。
ふわふわで、たぷたぷでさ。触っているとなんか、癒されるんだよね~~
ま、ペニスも好きだけど。
柔らかいのを撫でたり舐めたりしてるとさ。
最初は男に触られて気持ち悪りぃ~~なんて嫌がってても、結局。
本人の意志とは関係なく、だんだん元気になってゆくんだよね。可愛い」
「……静夜」
どうやら、僕の話が聞くに堪えないらしい。
静かすぎる低い声に、僕は可愛く首を傾げてみせた。
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