プロローグ~恋より刹那の快楽を~

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「静夜、静夜、静夜!  ……ああ、静夜の匂いだ」  ブルーノは莫迦みたいに僕の名前を何度も何度も呼んだかと思うと、僕の髪と首筋の匂いをすんすん、すんすんと変態チックにしつこく嗅いだ。  そして満足そうにため息をついて、やおら、僕の服に手を伸ばし、力任せに引っ張ったんだ。 「……っ!」  あっ、と思う暇も無かった。  ぶちぶち、と音を立てて、僕が着ていたシャツのボタンが跳ね跳んでゆく。  客と、男娼という立場を無視したとしても、僕みたいな小柄では、熊のように大きなブルーノに、抵抗するなんて無理だし、する気もない。  あっという間にボタンだけでなく、布地を引きちぎられんばかりに服を脱がされる。  そして、あらわになった乳首を甘く噛まれた。 「っ……ぁっ」  声が……我慢できない。  下着を乱暴に剥ぎ取られ、アナルにゴツイ指を突き入れられたら、もうダメだった。  粘膜に吸収されれば、気持ち良くなる成分の含まれたローションをたっぷりすくい取り、僕のイイ所を探る指の動きを始めれば、あっという間に、快感の熱が上がる。  胎内(なか)を出入りし、うごめく指は、まだ一本目だと言うのに。  薬と指技で生まれた、苦しいほどの快楽に耐えきれず、ため息と一緒に喘ぎ声が、でた。 「あっ……あっ、くぅ……ん」  男を相手にセックスする時は、高く声を出して喘いではいけない。  堪え切れなくなるまで待つんだ、と調教を受けたはずなのに。  そんなの、無理。  僕を抱くのに慣れた手が、容赦なく上げる熱に浮かされ、声が我慢出来ない。 「ブ……ブルーノ……っ……も…あっ……ダメだって、ばっ  指……っ……抜いて……」  もう、降参だ、と。  どうしても漏れ出る嬌声の間に間に訴えれば、金髪巻き毛のその男は、端正な顔を、にやり、とゆがめた。 「はじめたばかりで、なにを言う。  それに、静夜のカラダは『もうダメ』から良くなるんじゃないか」  そう言いながらもブルーノは、僕の中から指を引きぬいてくれたのだけれども。  ぬぷり。  と、代わりに入って来たモノを全身で受け止めて、火花が散る。  まだきちんとほぐされる前に、僕の中に根元まで、ぐい、と押し込まれたものは、そそり立つ、ペニス。  欲望の塊だった。  っ……あ……っ!  人間、あまりに強い刺激を受けると、却って声も、喘ぎ声も出なくなるらしい。  目の前に星がチカチカと散り、反射的に丸くのけぞった僕の背を抱きしめてブルーノはささやいた。
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