プロローグ~恋より刹那の快楽を~

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 ……  手ひどく抱かれて、意識が少し飛んでたらしい。  頭を低くベッドに抑えつけられ、腰を高々と上げた、全てに屈服した獣の姿で、激しく犯されていた僕は、怒った獣のような叫び声で、少しだけ正気に戻る。 「なんだ、貴様らは!  勝手にヒトの部屋へ入って来るんじゃねぇ!」  ……どうやら、メーヌリスの男性スタッフが、部屋に入って来たらしい。  激怒しているブルーノに、顔見知りのスタッフは、恭しく頭を下げるのを、僕は霞む目で見ていた。 「お楽しみの所大変、申し訳ありません。  ブルーノ・コスタさま。  ご予定の時刻を大幅に過ぎております。  どうぞ、一旦控室にお戻りになり、当店自慢の美酒で喉を(うるお)しませんか?」  あくまでも、丁寧な態度を崩さず、問いかけるスタッフに、ブルーノは、吠えた。 「酒などいらん!  オレは、まだ、満足してないぞ!  延長料金は支払う、出ていけ!」  側に、三、四人ほどのスタッフがいるにも関わらず、ブルーノは全く気にせず、僕の最奥に何回目か判らない、欲望を突き立てた。 「か……はっ……!」  新たな刺激に、もう、のけぞることすら出来ず、その場で、身悶(みもだ)えするしかない。  そんな僕を冷静に眺めてたらしい。  スタッフは、もう一度穏やかに言った。 「その男娼はもう疲れて、メーヌリスの名に恥じぬ満足なサービスができません。  ご満足いただけてないようでしたら、その男娼と同等クラスの新しい者と交換させていただきます。  どうか、この場はお引き取りを……」 「メーヌリスが何だ!  オレは、この静夜が気に入ってるんだ。  交換なんてされてたまるか!!  ああ、ここで、これ以上抱けないと言うのなら、静夜を丸ごと買ってやる!  いくらだ! 言い値の倍の金額を出すぞ!!」 「……大変申し訳ありませんが、お客さま。  その男娼は、身分制度の底辺に居る奴隷や貧民の類いでなく、平民、一般市民でございます。  借金を負っているわけでもございません。  もし、お気に召していただけたのなら、日を改めまして、当人と通常の雇用契約をお結びください。  メーヌリスは、仲介のみのお引き受けとなります」 「なんだと……!」  要は、僕が『うん』て言わなくちゃ、僕の身柄を引き取れないよ、と言っているスタッフに、ブルーノは、散々怒鳴りっけ、僕が欲しい、とダダをこねだした。  そんなブルーノを見て、スタッフ側では、埒が明かないと判断したらしい。  交渉役の男性スタッフは、失礼します、と頭を下げると、後ろに控えていた男たちに『控室に案内しろ』と合図を送った。
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