独 白

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「12年前…お前、なぜそのことを…」  国枝は明らかに狼狽していた。 「今回の感染症の調査で、過去の新聞記事を見ていました。  たまたまですが…その記事を見つけたんです」  12年前、それは国枝にとって思い出したくもない、しかし忘れることのできない事件だった。 「12年前の4月、閑静な住宅街で1つの殺人事件が起きました。  犯人は20代の男性。  その男は金品目的に住宅に押し入り、女性1人を殺害。  家にある現金、通帳を持ち去り逃亡しましたが、その10日後に警察よって逮捕されています。  その後の裁判で、男には無期懲役が言い渡された。そして現在も服役中…」  長戸の言葉を、国枝は机に視線を落としたまま聞き入った。 「これ…所長の奥様じゃないですか?」  意を決した長戸は真剣な眼差しで、国枝に問い掛けた。  国枝は何も言わず黙っていたが、おもむろに顔を上げ、長戸を見た。  そこにはもう相手を威圧するほどの迫力は微塵もなかった。
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