独 白

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「しかし…予想だにしないことが起こった」  国枝はいつもの表情に戻っていた。  しかし、その顔には生気が感じられなかった。 「ウイルスは触れた者全員に感染すると思っていた。  それが…触れても感染しない者も現れた」 「…どういうことですか?」  長戸は理解に苦しみ、尋ねた。  国枝の言うことはもっともだった。  皮膚から感染するのならば、受刑者全員に感染してもおかしくない。  そこから全世界に派生し、あらゆる人間が感染者になるのは容易に想像できることだった。  しかし、現実はそうではなかった。  『モンスターキラー』は犯罪者や自分の欲求のために手段を選ばず、無下に他者を傷つけた者にしか感染していない。  これは長戸の最大の疑問だった。 「進化している…そうとしか考えられない」  国枝の目は研修者のそれに変わっていた。
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