終 章

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終 章

 国枝は所長職を辞した。  そして政府の関係者を通じて、自分のことを全て話した。  自分が創り出したウイルス『モンスターキラー』。  しかし一方で、そのワクチンの製造方法についても研究していた。  その書類一式を、政府に提出した。  その結果、ワクチンはすぐに製造され、全世界に支給された。  瞬く間に感染者は激減し、世界は安心を取り戻した。  このことは一部の人間のみが知る重大秘密事項とされた。  国はこのことを公にはせず、ワクチン開発のことだけを伝えた。  ウイルスの製造がその専門家によるものであったことを公にすれば、国の信用を著しく損なう。  それを避けての対応だった。  長戸は新聞でワクチン開発の記事を読んだ。  記事は人類の希望を大きく取り扱い、テレビでは連日そのことが報道された。  長戸は新聞をたたみ、つけていたテレビを消した。  一人ソファーにもたれかかり、目を閉じた。 「本当のバケモノは人間なのかもしれない…」  あの日、国枝の前で自分が口走った言葉を思い返し、呟いた。  人間の進化を信じながらも、どこかで反する感情も持ち続けている。  しかし…と長戸は思う。  人間は信じるに値する生き物だ。  これからはそれを自分たちが証明していく番だ。  長戸は1つ大きく息を吐くと、勢いよくソファーから立ち上がった。  ワクチンの製造はまだ続いている。  長戸はソファーにかけていた白衣の袖に荒っぽく腕を通すと、研究室へと戻っていった。
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