世界浸食

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 各国の研究所は総力を費やし、昼夜を問わずウイルスの解明に全力を注いだ。  しかしその健闘をあざ笑うかのように、ウイルスはその正体を明かすことなく、ただ時間だけが過ぎて行った。  日本政府もこの事態を重く受け止め、逐一、感染状況を報告するとともに、予防の一助となるよう、国民に感染予防の一般的な方法を伝達していた。  ウイルスは空気感染なのか、飛沫感染なのか…それすらも確実には分かっていない現状では、核心に迫る予防法などなかった。  政府からの発表は、国民を混乱させないように、そして不安を助長しないよう、慎重に行われた。  当然、所長である国枝には苦情や問い合わせが毎日寄せられたが、当の国枝はそんなことは一言も漏らすことなく、後方から研究者たちを支援し続けた。  誰もが絶望を感じていた最中、1部の書類が研究所に届いた。
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