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 その日の休憩時間、長戸はいつものブラックコーヒーを飲んでいた。  ウイルスの解明作業は、依然急ピッチで進められていたが、何の進展もなかった。  今までの感染ウイルスにはない型、遺伝子配列…何をどう扱えば良いのか、さっぱり分からなかった。  長戸をはじめ、研究員には疲労が色濃く表れ、中には体調不良を訴えて休む者も出てきた。  長戸はブラックコーヒーを啜りながら、先日国枝からもらった感染者リストを、ぼんやりと眺めていた。  死者約1000名の内、およそ800名の氏名、年齢、性別、居住地、予測される感染経路が記されていた。  その6割が日本人で、多くが都市部に集中していた。  年齢も性別もバラバラで、特に高齢者に特化した感染症でない。  得られる情報は、それだけ…。  休憩時間はあと15分。  諦めてリストから目を離そうとした瞬間、長戸の頭に一筋の光が差し込んだ。  弱々しくて、今にも消えそうな光。  しかし、リストの氏名、居住地を眺めているうちに、その光はだんだんと強さを増し、波紋が広がるように、長戸の頭を支配していった。  長戸はリストを抱え、大急ぎで休憩室を出た。  そして研究所を飛び出した。  長戸が向かった先は、市立の図書館だった。
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