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緊急事態
「う〜ん。いまのところ手掛かりなしかぁ」
そう言って川端が両手を頭の後ろに回して天井を仰いだ時、白川がカウンターに頭を押しつけるようにして肩を震わせた。
腹を抱えて笑っているかと思った。
・・・いや違う、明らかに苦しんでいる。
「どうした!おい」
川端が声を掛けるも、答えられる余裕がない。
「うう〜。うぅ〜。」
唇は紫になりじっとりと脂汗を流して唸っている。
「す、すぐに救急車を!」
川端は白川の背中をさすった。
「ここからじゃこちらから向かった方が早い。救急に連絡しながら私の車で病院に向かいましょう」
マスターが機転をきかせて車を出してくれた。
白川を何とか車に乗り込ませ容態を救急に伝えながら病院に向かった。
ー
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病院までは車で20分程度のところであったが、不運な事に交差点は信号待ちで渋滞している。
今は一刻も争うのだ。
川端は白川の鞄から、先程のパトランプを取り出し助手席から屋根に乗せた。
スイッチを押すとクルクルと赤いランプが辺りを照らす。
「あつらえたみたいだ!」
川端は歓喜した。
それを見たマスターがけたたましくクラクションを鳴らすと、目の前の車が左右に避けモーゼの十戒のように道が開けた。
颯爽と救急病院に入ると吸い込まれるようにして白川は運ばれていった。
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