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遼はその場に立ち尽くし、閉まったドアを呆然としたように見つめていた。
が、はっとしたようにあたしの方を見ると「花!」と言ってキッチンに走った。
厚手の手袋をして花束を慎重にほどいていく。
しばらくして「…これか」と言って小さな黒い物体を取り出した。
黒い物体には何かコードがついている。
なんだろう…
「この、棘みたいなのも怪しいな。
毒物班も要るか」
と呟いて
「早葵、それに絶対触るなよ。
それとキッチンからしばらく離れて」
と言って自分の部屋に入っていった。
あたしは自分の部屋に入り、ベッドに座った。
何があったのか、あたしにはまったく判らなかった。
あの絵に描いたような、人の好さそうな笑顔の人が、誰かに何かを命令されて来たってこと?
…遼の『俺はお前という大事な友人を失くしたくない』という切ない声が蘇る。
可哀相な、遼。
その後、バタバタと軍の人たちが出入りして、家の中は騒然となった。
遼は悲痛な表情でその場に立ち会った。
軍に来て報告をするように言われたみたいだけど、あたしのことを心配して報告書を提出することにしたみたいだった。
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