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研修期間が終わるのは人それぞれだけれど、もう愛ちゃんも団員に選ばれてもいい時期だ。
「今度は絶対負けない、なんて言っておいて。私がまだ円と同じ土俵に立てていないんだもん。バカみたい」
「そんなこ、」
「”そんなことない”とか言ったらはっ倒すからっ!」
声を荒げた愛ちゃんが私を睨みつけと、階段を踏み鳴らしながら登ってくる。
私の横を通り押して、十段ほど上で足を止めた。
「私、パ・ド・ドゥクラスもヴァリエーションクラスも受けるの。よろしくお願いします。”円先生”」
刺々しい声に返事をすることができず、その背中は階段を駆け上り消えていく。
伸ばしかけた手は、宙を掴んで力なく落ちていった。
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