時をアントルシャ

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バレエ団から拓也さんの運転で数十分、車はゆっくりと懐かしい通りを走り始める。 雑談していた私達も徐々に口数が少なくなって、やがて静かに景色を眺める。 ああ、本当に────。 胸の中に優しい温かさが広がっていく。 車は一軒家の前に止まった。拓也さんに短く礼を言って、助手席から降りる。 屋根の上まで見上げれば、本当に色々な記憶が走馬燈のように流れた。 トランクからキャリーケースを下ろした拓也さんが、門を押して中へはいる。 そして振り返って手を差し出した。 「おかえり」 ああ、変わらない景色がここに。 少しだけ涙が滲んだけれど、満面の笑みで答えた。 「・・・ただいま!!」 忘れられない時間を過ごした、"私達五人"の家だ。
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