時をアントルシャ

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そしてその向かい側、私の部屋だ。 リビングでみんなと過ごす時間の方が多かったからあまり部屋に思い出はないけれど、ドアを開けた瞬間の香りで少しだけ目頭が熱くなる。 駄目だな。 ここにいると涙脆くなっちゃう。 思い出が沢山詰まった私たちの家だから、楽しかった記憶が次々と蘇ってくる。 扉を開けて、部屋を出た。 三階の最奥、一番柔らかい日差しが当たる部屋。 少し錆び付いたドアノブを回せば、キィと掠れて扉が開く。 ふわりと流れ出した風が、懐かしい匂いを運ぶ。 忘れられない匂い。 「────ドロフェイ」
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