時をアントルシャ

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と、その時、2階と3階を繋ぐ階段を駆け上がる足音が聞こえて、その足音は部屋の前でとまる。 勢いよくドアを開けたのは、肩で息をする拓也さんだ。 ぽかんとしながら、「どうしたんですか?」と目を瞬かせる。 拓也さんは無言で私の前まで歩み寄ると、膝を折る。 私を見上げると、手を伸ばし頬に触れた。 長い指が私の頬を擦る。 そこで自分の頬が濡れているのに気がついた。 「あっ……、違、ほんとに私。これはまだ、立ち直ってないとかじゃなくて……っ」 拓也さんが私の隣に座った。
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