時をアントルシャ

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「分かってる。だからもういい、それ以上話さなくても」 私の頭を抱き寄せて肩に押し付けた。 「ちょっと肩貸して」 「私が借りちゃってますけど」 おどけて言ったつもりが、語尾が湿った。 思わず拓也さんのシャツを握りしめた。 「冷蔵庫にさ、ドロフェイの名前が書いてあったプリンがあってさ」 この家にはドロフェイがいた証が、まだこんなにも残っている。 「青カビ生えてたんだ。・・・だいぶ、戦いた」 「・・・んふふ、拓也さん綺麗好きですもんね」 そう言いながらボロボロと涙が溢れて、なのにどうしても笑みが零れる。
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