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轟音を立てて飛び立った飛行機が、雲の陰へ消えていく。眩しく輝くその白い機体を目を細めながら見送った。
同じ空なはずなのに、日本の空がとても懐かしい。
「ごめん、円ちゃん。キャリーケースやっと見つかった」
大きなキャリーケースを引っ張りながら拓也さんがそう言って歩み寄る。
「全然待ってませんよ。じゃあ、行きましょうか!」
そう言って笑うと、拓也さんは私の隣に立って同じように空を見上げた。
「空、見てたのか?」
「あ・・・はい。ロシアの空とは違うなって。空も空気も、全部懐かしくて」
「三年ぶりか」
はい、と言う言葉が僅かにかすれた。
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