胸をタンデュして

4/30
前へ
/81ページ
次へ
「誰かとパートナー組んで練習できた?」 「あ、その、えっと・・・」 身を縮めおどおどとする姿に、誰かの影が重なる。 いいや、誰かじゃない。私はよく知っている。 彼女は、私自身を見ているようだった。 「折角のパ・ド・ドゥクラスだし、誰かと組んでみよっか」 「あ、はい・・・」 ぎゅっと腕を握って俯くその背中に、どうしても手を伸ばしたくなった。 ドロフェイが、落ちこぼれだった私に手を差し伸べてくれたように。 ぽんと彼女の背中を押して、「拓也さん!」と名前を呼ぶ。 振り返った拓也さんは、すぐに私たちの元へ駆け寄る。
/81ページ

最初のコメントを投稿しよう!

109人が本棚に入れています
本棚に追加