胸をタンデュして

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合計2時間のレッスンは、何事も無く無事終了した。 ありがとうございました、と声を揃えて挨拶すると、生徒たちは一斉に拓也さんの周りに集まる。 元ローズファミリーだし今はサクロの副団長だ、知名度もあってルックスもいい、人気なのもよく分かる。 水を飲みながら遠目に見ていると、背後から「あの・・・」と声をかけられた。 振り返ると、先程声をかけた女の子千夏ちゃんが立っていた。 「あ、あの円先生。今日はありがとうございました」 「うん、お疲れ様、千夏ちゃん」 ぺこりと会釈した千夏ちゃんは、立ち去らずにその場で何か言いたげにもじもじしている。 首を傾げながら言葉を待っていると、おずおずと口を開いた。 「あの、どうして私なんかに、声掛けてくれたんですか・・・?」 こちらを伺う姿に、3年前の自分が強く重なる。 『どうして私なんか』何度もドロフェイに問うた言葉だった。
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