胸をタンデュして

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名前を呼ぶと、思わず微笑みが浮かぶ。 『まさかマドカが、後輩を導く立場になるなんてね〜』 ドロフェイがそうやってケラケラと笑っているような気がした。 「千夏ちゃんは、どうして自信が持てないの?」 「・・・私、アブニーラテスト毎年受けてるんです。なのに一度も受からなくて。それに、足もぜんぜん上がらないし、振付を覚えるのも遅くて。色々先生から注意してもらったことあるのに、気をつけようと思うと全然上手く動けなくて」 ああ、本当に自分自身を見ているみたいだ。 こんなにも小さく縮こまって、不安になっていたのか。 でも、でも。 彼女の目はなんて力強いんだろう。 真っ直ぐで濁りひとつない、先を見据えた目だった。
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