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「・・・うん、確かに他の子に比べれば、足は上がってないのかもしれないね」
そういえば、分かりやすく気を落とした千夏ちゃん。
両手を伸ばして彼女の頬に触れ、そっと上を向かせた。
下を向かないで。
だってきっとあなたも、才能を秘めた眠り姫だから。
「でも、一つ一つのポーズは誰よりも綺麗だった。レッスン中、綺麗に体をキープしている子がいるな、と思って千夏ちゃんを見たの。そしたら、サポート手なしで止まってて、びっくりしたよ!」
千夏ちゃんが目を見開いて私を見つめる。
「パ・ド・ドゥの技はサポート手があるのが前提だから、一人で練習するとどうしても崩れちゃうの。軸がブレたり、膝が曲がったり、つま先が伸びなかったり。でも、千夏ちゃんは誰よりも綺麗だった」
「でも、でも・・・」
「駄目だよ。自分の才能を自分で否定しないで。千夏ちゃん自信が、自分を信じてあげないでどうするの? 確かにダメなところもあるかもしれない。けれど、それ以上にいい所を沢山持っている」
千夏ちゃんがくしゃりと顔を顰めた。
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