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「────お久しぶりね、円さん」
去年に還暦を迎えたと聞いてはいたが、相変わらずしゃなりと背筋を伸ばし、力強い目でまっすぐと私を見た。
昔はその目が怖かった。
自信もなく、オドオドして、失敗ばかりの私をどんな風に見ているのだろうとばかり気にしていた。
でも、今はその目の奥にある優しさを、生徒を見守る温かさを知っている。
だからこそ、もう一度会う時は胸を張って会いたかった。
「お久しぶりです、小鳥遊先生」
少し目を細めて微笑んだ小鳥遊先生。
「熊谷さんもお忙しい中、起こし下さってどうもありがとうございます」
「いいえ。円ちゃんの母校と聞きましたから、是非お力になれたらと」
隣のソファーに腰掛けていた拓也さんが、そう言って笑った。
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