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そんな話をしていると、数分もしないうちに応接間の扉がノックされた。
はい、と拓也さんが答えると静かに扉が開く。
「失礼します」という声とともにティーカップを乗せたトレーをもって、中へ入ってきた人物に「あっ」と思わず声を上げた。
「愛ちゃん……!?」
「……久しぶり、円」
気まずそうに視線を逸らしたのは、小鳥遊でスクール生だった頃に仲良くなった友人、愛ちゃんだ。
ローザンヌのコンクールに出た時も、予選会場で偶然会った。
その時はいろいろと衝撃的なことを言われたっけ・・・。
でも一人で東京に出てきて初めてできた友達が愛ちゃんだった。
だからこそ、どうしても彼女を憎むことが出来ない。
愛ちゃんはどう思っているのか分からないけれど、私のなかでは変わらず友達だった。
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