時をアントルシャ

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「もうすぐ、別の先生が説明しに来ると思うので」 テーブルにカップを置きながら、露骨に私とは目を合わせない愛ちゃん。 拓也さんも愛ちゃんのことはローザンヌで知っていたので、苦笑いで私に視線を送る。 応接間に、なんとも気まずい空気が流れた。 小鳥遊先生からの依頼というのは、毎年三月中旬から四月の頭にかけて行われているワークショップ週間の講師をしてほしいというものだった。 これは小鳥遊エコールドバレエに所属する団員や、国内外のバレエ団で活躍するダンサーを講師として招いて、ヴァリエーションやパ・ド・ドゥ、コンテンポラリーなど、多岐にわたるジャンルのレッスンが朝から晩まで行われる。 生徒はそれらのワークショップに自由に参加できるという仕組みになっているのだ。 私も毎年、ぎっちぎちにスケジュールを組んで、ありとあらゆるレッスンに参加した。 中学三年生の時には、たしかラスコーワ先生のレッスンも一日だけ設けられていたけれど、抽選に外れて泣く泣く諦めたんだっけ。
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