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無数の建物の間に誰かの走る音が響く。
タッタッタッタ
その足音は軽快な物ではなく凄く重苦しい雰囲気を纏っっていた。
随分走ってきたのだろうその者は息を切らしながら走っていた。
まるで怪物にでも追われているかのように⋯
「ハァ⋯ハァ⋯ここまで来れば⋯」
その者は周り見渡してからその場に乱暴に腰を下ろした。
だいぶ限界だったのだろう酸素不足で手足は少し痙攣を起こしていた。
頭も同様の理由で軽い頭痛を起こしていた。
だがこの者にはこのような状態に陥っても逃げなければいけない理由があった。
実は今日18歳の誕生日なのだ。
誕生日は毎年来る。
そして毎年誰かがお祝いをしてくれる。
だがこの者には誕生日が喜ばしいことが理解できなかった。
理由は明白。
この者にとって誕生日は命の危険が伴うものだった。
ケーキに毒が入ってるから?
プレゼントに爆弾か何かが仕組まれているから?
違う、断じて違う。
この者にとっての命の危険と言うのはそういうものじゃない。
この者にとっての命の危険というのは⋯
「あ!いたいた!」
不意に声をかけられたので声のした方をみるとあいつがいた。
この者が必死に逃げていた元凶だ。
「っ!!」
すぐに立ち上がろうとしたが体がいうことを聞かなかった。
体が重い。
こうしている間にも奴はどんどんと近づいてくる。
「なに?走り疲れて立てないの?」
奴が十分近づいてくるとそう問いかけてきた。
「⋯⋯」
「もう諦めなよ、どうせ君は今日の18時に死ぬんだから」
奴はあの者を立たせると支えて歩き出した。
奴が目指しているのは中央の広場だ。
あそこでこの者を殺すのだろう。
「今更怖気づいて走って逃げるなんて馬鹿なんじゃないの?どうせ死ぬのにさ」
「⋯⋯」
「それにさ去年は君が、君自身が16歳を殺したんだよ?覚えてるよね?」
「⋯忘れるわけねぇじゃん」
入れこれ喋っているうちにいつのまにか広場についていた。
あんなに走ったのにこんなに近くにいたのかと絶望した。
「⋯さて、あとは殺すだけだけど⋯何か言いた事ある?」
奴は広場の中央にあの者をおき少し離れながら言った。
広場の時計に目をやると17:55になっていた。
あと5分でこの年は終わるのだ。
「⋯一つだけ聞いていいか?」
「なに?」
「あんたは怖くねぇの?来年はお前が殺されるんだぞ18歳」
この者⋯いや17歳はそう質問した。
「⋯怖いに決まってんじゃん。でもさどんなに逃げてもどんなに助けを呼んでも、来年は来るんだよ」
しばらくの沈黙が流れた
「質問はそれだけ?」
「⋯あぁ」
そう17歳が答えると18歳はそっかと言ってポケットから銃を取り出した。
時計に目を向けると17:59と刻まれていた。
「カウントダウン始めるよ!10⋯9⋯8⋯」
17歳は静かに目を閉じた。
「3⋯2⋯1⋯」
ティーンタウンに銃声が響き渡った。
ハッピーバースデー!
18歳の誕生日、おめでとう!
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