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程なくしてツナ缶が運ばれてきて、ニアは隠していた尻尾をゆらゆらと踊らせる。
ニアの大好物がツナ缶であることを、実晴は心の中に書き留めた。
「実家は行儀やら作法やら煩いから疲れるんだよね。ツナ缶も食べさせてくれないし」
「は、はあ……。ツナ缶好きなんですね」
「うん。1日3食ツナ缶でも喜んで食べるよ」
どんどんと空いた缶を積み上げていくニアとは対照的に、少食の実晴は半分も食べ終わらないうちに箸を置いてしまう。
ニアは申し訳なさそうに耳を垂れながら、天ぷらの盛り合わせや魚の煮付けを追加で頼んでくれた。
「ご、ごめんね。実晴に気遣わせてる……食生活もちゃんと実晴に合わせるから大丈夫だよ。だから……俺とお付き合いしてくれる?」
「えっと……ニアさんこそ、本当に僕なんかでいいんですか? 知っていると思いますけど僕、前のアルファに捨てられた傷物だし借金もあるし……」
実晴よりもっと綺麗な経歴のオメガなら、ニアと縁談を望む者も山ほどいるだろう。
自分のことを、ニアがどんなふうに聞いているのかは知らないけれど、優しいニアが騙されているのならとても不憫だと思った。
「でも、番にはなっていないんでしょう?」
「はい……」
「それなら問題ないよね。結婚するのなら財産も借金も共有するから問題ない。後は俺と実晴の相性だよ」
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